「要するに退屈なのよ、現代ってのは」
「目を見張るすばらしさ」と
トリュフォーが賛辞したというこの作品
「狂った果実」という、タイトルもいい
若者の享楽、女性の性の解放
理性のきかない欲望、その果ての 破滅
小説だけではなく、脚本も手掛けた
若き日の石原慎太郎氏の類いまれな才能を感じます
(しかしどんな天才も、老いや病に勝つことは難しい)
大学生の夏久と、高校生である弟の春次は夏休み中なのでしょう
鎌倉の駅で一目見た恵梨という美女に春次は一目惚れ
兄の夏久は最初は気にも留めていなかったものの
次第に春次より恵梨に夢中になってしまいます
恵梨は初心で純情に見えるけれど、実は人妻で、男好き
そんな恵梨に自分と同じ匂いを嗅ぎ取った夏久
だけど恵梨のほうは、外国人であるうえ
仕事に忙しい初老の夫との関係には欲求不満
独身を、恋愛感情を取り戻したい
春次の無垢で純粋な心のほうに惹かれていたのです
しかし恵梨の肉体の虜になってしまった夏久は
恵梨の全てを手に入れたいと思うようになり、春次を裏切ります
自分を信じ、いつでもかばってくれた弟だというのに
信じていた、愛していた、真面目だったからこそ
裏切られた時の怒りは大きい
犯罪者になることも
家族の崩壊も恐れないほどに
壊れたい、ボロボロに
裕福さや、満足とは裏腹な
堕ちたい願望を描いた逸品
海辺で鳴り響くラジオの映像がいい
行き場のない若者のように未熟な映画
だけど、それこそが
傑作になった奇跡かも知れません
【解説】allcinemaより