息子(1991)

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「いいではないか」

はじめは「祖国」というタイトルだったそうです
でも「祖国」だと民族分断みたいですものね(笑)
原作は椎名 誠の「倉庫作業員」

仕事のため都会に出ていく若者と、田舎に残ったひとり暮らしの老人
山田洋次らしく家族のあり方を丁寧に描写した秀作

 

【ここからネタバレあらすじ】

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昭男(三國連太郎)は岩手で農業を営む高齢者で妻に先立たれひとり暮らし
地元に嫁いだ長女が同居を提案しても頑なに拒否しています
妻の1周忌にアロハシャツで帰ってきた
定職にも就かない次男の哲夫(永瀬正敏)が心配の種

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東京に帰った哲夫は鉄工所でアルバイトすることにしますが
あまりのキツさにすぐ辞める決意をしていました
ところが納品先の受付の女の子があまりに可愛くて一目惚れ
征子(和久井映見)は聾唖者でしたが
彼女に会うため仕事を続け、彼女のために手話を勉強します(笑)
意外にも仕事を頑張る哲夫のことを職場の仲間も認め始め
哲夫は臨時社員に昇格しました

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いっぽう戦友会の集まりのため上京した昭男は
結婚して孫もでき、マンションを買った長男のところに泊まりに行きます
長男は一流大学を卒業し、大企業に勤める自慢の息子
なのに突然やってきた父親をどうするか
ふすまの向こうで夫婦喧嘩する声が聞こえる居心地の悪さ

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昭男は岩手に帰る決意をし
その前に哲夫のアパートにも寄ることにしました
哲夫がやっと落ち着いて仕事をしていることを知り安心し
しかも結婚したい女性までいるという
そして次の日、哲夫と征子からファックス電話をプレゼントされるのです

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社会から偏見を受けたことがある者同士だからわかる、孤独、苦しさ
感謝を言葉で口で言うのは難しいけれど、文字でなら伝えることができる
できそこないだからできた親孝行

立派だと思っていた長男は仕事で疲れ、楽しそうでなく
バカ息子だった次男のほうが、6畳一間のボロアパートでも幸せに暮らしている

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将来はどうなるかわからない
だけど今は家族が増えることがただただ嬉しい
その気持ちを思わず歌にする
これは言わずとも歓びを感じる見事なシーン
さすが三國連太郎と思ってしまう

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田舎に帰れば「息子に会って幸せだなお前は」と迎えられ自慢
そして雪深い中、玄関までたどり着いくと
妻が生きていたころの、家族の温かい団らんが見える

ここで昭男は夢を見ながら雪に埋もれて死んだな
と思ったのですが、そうではなく(笑)

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我に返ると、いつも通りの孤独な暮らしに戻っていました
違うのはわが家にファックスがついたこと

【ネタバレあらすじ終了】

 

老いや家族をテーマに作品を作ると、説教臭くなりそうなものだけど
山田洋次はそういうのが一切ないのがいい

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昭和から平成、令和になってもダメ男を撮り続けていくんだな
きっと

 


【解説】allcinemaより
男はつらいよ」の山田洋次監督が、椎名誠の『倉庫作業員』を基に、田舎に住む父親と都会でフリーアルバイターを続ける息子との葛藤を描いた感動ドラマ。三國をはじめ、永瀬、和久井ら出演者たちの抑えた演技が冴え渡る。
 東京でフリーアルバイターとして生活を送る哲夫。母の一周忌に岩手の田舎に帰るが、フラフラした生活に不満を持つ父・昭男とはギクシャクしたままだった。東京へ戻った哲夫は、下町の鉄工場で働き始める。そこで取引先の倉庫で働く征子と出会う。やがて、哲夫は征子が聾唖であることを知る……。