女王陛下のお気に入り(2018)



イギリス王室ものなので(笑)

間違いなく何かしら誰かしら

アカデミー賞は受賞する(はず)の作品


時は1708

跡継ぎがいなかったスペインを、血縁のフランス王が継承しようとしたのを

イギリスが阻止しようとフランスと戦った「スペイン継承戦争

その戦争まっただ中の王室に、没落して売られた貴族の娘

アビゲイルが女中としてやってきます




馬糞だらけの泥に顔から突き落とされたり

厨房ではシンデレラのように虐められ

床掃除用の灰汁(苛性ソーダ)で

手の皮が溶けてしまうアビゲイル


しかし彼女は野心のある娘なんですね

治療のために薬草で作った軟膏を

痛風のアン女王陛下の腫れた脚に塗り

女王の側近になることに成功します




介護関係のお仕事をしていたり

身内に要介護のいる方なら想像つきやすいと思うのですが

女王陛下は要介護4のレベル


まともに歩くことも出来ないし

寝室に17匹(流産や死産や生まれても早くに死んでしまった子の数)の

うさぎを飼っていて、部屋はうさぎの毛や糞だらけ

側近に戦争中なので贅沢はできないと言われても

「戦争中なの?」という始末




一応議会のようなものもあって

フランスと戦争を続けたい、税金を上げたい派と

戦争を終わらせたい、税金をあげない派に別れているのですが

どちらを支持したらいいかも決められない


そこで女王陛下のブレーンとなって操るのが

サラ・チャーチル公爵夫人(チャーチル首相の祖先)




いうなれば介護士のトップで、優秀なケアマネージャーといった存在

介護が必要でも、まだそれほどのお年じゃない女王陛下の

「快楽」のお世話や「プレイ」をしてさしあげます

そうして議会での発言権を持っているのです


女王陛下とサラのレズビアンの関係を知ったアビゲイル

そのことを利用し、自分も寵愛を得るために女王陛下を誘惑します




娼館で梅毒の兵士の餌食になるくらいなら

恩も信頼もあるものか

王室でのし上がっていこうと企み

ついにはサラを失脚させることに成功するのです


これはコメディ映画なのですね

といっても笑えるものではなく

「皮肉」っているというか、「ばか」にしているのです




あっちは汚物、こっちは下ネタ

庶民が死のうが、暴動おこそうが、知ったことじゃない

政治家なんてこんなもの


実際にアン女王を演じたオリヴィア・コールマン

「自分トランプだと思って演じました」とコメントしたそうです



身内ばかり味方につけて身内の言うことだけを聞
それはトランプに限らずどこかの国の総理も同じ
お友達だけを大切にする「総理のお気に入り」政権
そんな政治を風刺しているのです

もしこのグロテスクな映画がアカデミー作品賞を受賞したら
監督にとっては「王室ものが受賞する」という形式さえ
ブラックユーモアになるのではないでしょうか (笑)



【解説】シネマトウディより

『ロブスター』などのヨルゴス・ランティモスが監督を務めた、18世紀初頭のイングランドを舞台にした宮廷ドラマ。病気がちな女王と幼なじみ、新入りの召使いの思惑が絡み合う。ドラマ「ナイト・マネジャー」などのオリヴィア・コールマンが主演を務める。共演は『ナイロビの蜂』などのレイチェル・ワイズ、『ラ・ラ・ランド』などのエマ・ストーン、『X-MEN』シリーズなどのニコラス・ホルトら。

18世紀初頭のイングランドの人々は、パイナップルを食べることとアヒルレースに夢中になっていた。体の弱いアン女王(オリヴィア・コールマン)の身の回りの世話をする幼なじみのレディ・サラ(レイチェル・ワイズ)が、権力を掌握していた。ある日、宮中に新入りの召使いアビゲイル(エマ・ストーン)がやって来る。