天才作家の妻 -40年目の真実-(2019)



「本は読まれなきゃ」

原題はTheWife(妻)


マーガレット・ケインという実在する画家をモデルにした

ビッグ・アイズ(2014)という映画もありましたが


こちらはジョゼフ・キャッスルマンという

(架空の)ノーベル賞作家とその妻ジョーン

イキナリ結婚40年目の70代の夫婦のベッドシーンから始まって

「マジかよ」状態()




この男セックス症候群というのでしょうか

不安やストレスがあると落ち着くために

セックスがしたくなってしょうがない


大学教授時代に、女学生だったジョーンとも

妻子があったにもかかわらず不倫して結婚しまいます

その結果大学はクビになり、出版社で働くジョーンのコネで小説を発表

しかしそれらの小説は、実はジョーンが書いたものだったのです




小説は大絶賛され、ジョセフは巨匠と呼ばれるようになります

そしてついにノーベル賞、まだ駆け出しの小説家の長男デビッドと共に

授賞式に出席するためにスウェーデンストックホルムに行きます


ここは、普段知ることのない「もしもノーベル賞を獲ったら」の

パーティの様子や授賞式のリハーサルという体験を知ることができ

興味深く見ることができました




そこでもやはり緊張からか

ジョセフは若いカメラマンの女性を口説きます

そうやって彼は何度も妻を裏切り浮気してきたのです


旦那の甲斐性なしは100も承知のジョーン

なのに誰もに「偉大な作家」だとか

「素晴らしい旦那さん」と称えられると

微妙で複雑な気持ちにならざるを得ません




そんなとき、アメリカから取材に来た伝記作家ナサニエル

女子大生の頃書いた小説の文体が、ジョセフの書いた小説と全く同じだと

本当の作者はジョーンだと指摘してきたのです

長男にまで、母親はゴーストライターだと吹き込みます


1950年代は女性が専門職をもつことが認められず

主婦になって子どもを産むことこそが女性の成功だと

そう思われていたのです




仮に小説家になって出版しても、女の書いた本など誰も読みはしない

ジョーンは夫の名前で売り出すことで

自分の小説を世の中に出すチャンスを得たのです

しかもこのゲス旦那に尽くしてきたのです


回想シーンで若き日のグレン・クローズを演じた女優が

目元や表情があまりに似ていて、これは助演賞ものかと思ったら

グレン・クローズの本当の娘だったんですね(笑)


一方のグレン・クローズ

なぜか大竹しのぶさんに見えてきます(ホントホント)




それでも40年暮らしていればいいこともある

ジョーンが離婚を決意した時には、長女に孫が生まれ

離婚の話などすっかり忘れてしまい、ふたりではしゃぐ

ふたりの間には何事にも負けない愛が確かにあるのでしょう

そして真実を知られることなくジョセフは死んでしまいます


最後まで本当のことは言わず、表情だけで全てを想像させる

グレン・クローズがの演技はさすがのもの


ナサニエルへの態度も夫の名誉を守ったわけではなく

自分の物語を男の名前で二度と書かせたりしない

そんな決意を伺わせます

これからの人生が彼女の本当のデビューなのかも知れません


ひさびさのクリスチャン・スレーターも適役で

ズル賢さをがにじみ出ていて好演でした




ただ、作品としてはそれほど心に刺さらないし

感動もありませんでした

原因は、やはり夫がクズすぎたからでしょうか(笑)

大抵のオンナはこんな男に我慢できないし

こんな男のために知性のある良い妻ではいられませんから




【解説】allcinemaより

ガープの世界」「アルバート氏の人生」のグレン・クローズが、長年尽くしてきた夫のノーベル文学賞受賞に複雑な感情を抱く妻を巧演して高い評価を受けた愛憎ドラマ。世界的な作家の妻が夫の晴れ舞台を目の前にして激しく揺れ動くさまと、次第に明らかになる妻の夫に対する激しい葛藤の軌跡をミステリアスかつ繊細な筆致で描き出す。共演にジョナサン・プライスクリスチャン・スレイター。またグレン・クローズ扮する主人公の若き日を実の娘でもあるアニー・スタークが演じて話題に。監督はスウェーデン出身のビョルン・ルンゲ。
 アメリカ、コネティカット州現代文学の巨匠として名高いジョゼフのもとにノーベル文学賞受賞の報せが舞い込み、ジョゼフは40年間連れ添った妻ジョーンと喜びを分かち合う。さっそく2人は作家となった息子を伴い授賞式に出席するためスウェーデンストックホルムを訪れる。するとジョーンの前にジョゼフの伝記本執筆を目論む記者ナサニエルが現われる。彼は、作家として二流だったジョゼフがジョーンとの結婚を機に傑作を次々と生み出した事実を突きつけ、その裏には単なる内助の功以上の秘密があったのでないのか、とジョーンに迫るのだったが…。