麻雀放浪記(1984)




「あいつは俺の女だ
 この世でたった一人の俺の女だ
 だからあいつは 俺のために生きなくちゃならねえ
 俺は死んだって てめえっちに甘ったれたりはしねえが
 あいつだけには違うんだ」


私は麻雀を全くしませんが
する人で、リアルタイムで見た人は
今でも、卓を囲むとこの映画の話題が出るそうです
それだけセンセーショナルな作品だったそうです

監督はイラストレーターの和田誠さん
シナリオに絵コンテをつけてみせたところ
角川氏が「あなたが監督をやるしかない」と勧めたそうです
「この機会を逃すと二度と監督を勧められることはない」と
和田さんも決意したということ
調子に乗って続編を作ったり、ほかの作品の監督をしなかったことには
和田さんの品性を感じます


ママ(加賀まりこ)が草笛を吹く中で
流れ星がひとつ流れるシーンなど
実に素晴らしい、奇跡のワンカット

DDT散布、紙芝居屋、戦後を再現した画に
独特の世界観も見事です





非情な世界に足を踏み入れた
玄人(ばいにん)と呼ばれるアウトローたちの
生き様を描いた群像劇

配牌とツモによる多彩な展開
役満をテンパる緊張感
相手の性格と危険牌の読み
一発逆転、運

「あっ、また天和(テンホー)だ」
「あっ、また平和(ピンフ)だ」

博打をやるために博打で稼ぐ

権利書や女は、ぐるぐる回る





特に出目徳(でめとく)の高品格さんは印象的で
本物のイカサマ師は、ヒロポン中毒は
こういう表情や仕草をするのだろうと思います

死に様まで見事なもので(笑)
身ぐるみ剥され、「うちに帰してやろう」 と
崖からゴロゴロと転がり、うつ伏せでドブにはまる

いくら稼いでも、死ぬときには何も残さない
それが博打打ち


麻雀のルールを知っている人が見たら
もっと面白いのでしょう

ギャンブルと、男と女を描いた
至高の1本だと思います


阿佐田哲也の同名ベストセラーを基に、イラストレーターの和田誠が映画化し監督デビューを飾った作品。戦後の東京を舞台に、麻雀に打ち込む若者が、様々な勝負師との出会いを通して成長していく姿を描く。敗戦直後の上野。青年・哲は、ある日、以前バクチを教えてくれた上州虎と偶然会う。虎に連れられチンチロ部落に足を踏み入れた哲は、なけなしの金でプロのバクチ打ちであるドサ健の張りにノッた。おかげで相当勝ったが、その大半をコーチ料としてドサ健にとられてしまう……。個性的な俳優陣とこれが初監督の和田誠の手堅い演出が光る1本。