U・ボート ディレクターズ・カット版(1997)




1981年に149分の劇場版が製作され
(ソフト化はされておらず見れないそうです)
1985年にテレビ版全6話が収録された、合計313分の完全版
そして1997年に208分の本作がリリースされたそうです

最初の90分はなかなか話が進まないのでダレます
しかしそのあとの展開は一気に見れました
ラスト5分の空爆シーンについては、芸術の枠に入っています






連合国にとっては神出鬼没の悪魔
ドイツ軍からは「深海の英雄」「灰色の狼」とあだ名されたUボート
しかし命令とあらばどんな任務も拒絶することはできません
Uボートの主な任務は敵国の輸送船を狙うことでした
そのため犠牲者は民間人などの非戦闘員だったのです


1941年12月
それまで絶対的な優位を誇り、恐れられていたUボードでしたが
連合国のソナーや護衛艦の強化で、その優位性は危うくなってきます
一度駆逐艦に見つかれば、立ち向かう手段はなく
ひたすら逃げるしかないのです

そして、それと同時に乗組員が恐れるのは
巨大な水圧で、いつぐしゃりと潰れてしまうのかもしれないということ
酸素がなくなるかも知れないということ
一度深海に潜れば逃げ場はないのです





フランス人の婚約者を残してきた若い航海士
その娘は妊娠しているという
レジスタンスに見つかったらどうするんだと心配する同僚
この青年だけが過去のエピソードが語られます
ほかの乗組員は何者なのか、名前さえもわかりません

狭苦しい潜水艦の中での延々と続く作業
何ヶ月間も風呂にはいることもなく共同生活
乗船前に売春宿で毛ジラミをうつされた男のせいで
乗組員全員が治療を受けるハメになってしまいます

やたらと狭い潜水艦の中で人が走るのは
潜行するときはなるべく多くの乗組員を船首に移動させて
重くするためなのだそうです





スペインに寄港している独商船から燃料を購入すとき
商船の船長達が「ハイル・ヒトラー」挨拶したのに艦長は無視したことで
艦長以下士官は反ナチのドイツ軍だということがわかります

タンカーを撃沈したときは誇らしかったけれど
いざ沈んでいくタンカーの乗組員を目の当たりにして
助けてやれないうしろめたさ、無念さ


攻撃を受けてからは修理、修理、ひたすら修理
冷たくなったエンジンにスイッチが入り
ずらりと並ぶピストンたちがいっせいに動き始めた時の感動

艦長は立派に任務を務めたと思います
パニック状態でも、冷静に報告を求め、指示を出す
あまりの緊張に狂った兵士を、射殺しようとする冷徹さを持ちながらも
最終的には部下を信頼し、感謝の言葉を述べる
ついに潜水艦が浮上したとき、わめき散らす姿も人間的でした





これはもう、面白いとか、面白くないとか
正義だとか、悪だとかという次元を超えた作品です
Uボートからの視点オンリーの
潜水艦での軍人の生活のリアリティなのです


欠点をあげるとするならば
エンターテインメント性が弱いことでしょう
そして3時間28分は長い、長すぎました(笑)

それでも「ラスト5分」の畳み方は、やはり素晴らしい
迷いましたが「お気に入り」にします



【解説】allcinemaより
第二次大戦下、基地を出航したドイツの潜水艦U-96の過酷な戦いを描いた骨太な戦争ドラマ(信じがたいが元々はTVミニシリーズ!)。狭い艦内を自在に動くカメラワークの迫力と続発するトラブルの息詰まる緊張感は見応えがあるが、その果てに迎えるラスト・シーンの虚しさは、史実をなぞらえなくても戦争の悲惨な一面を充分に訴えかけるという証明でもある。勇壮にして物悲しいテーマ曲も良い。99年にはLDのみ鑑賞可能だった209分の「ディレクターズ・カット」版が公開。