ロシアのキツツキ(2015)




1986年4月26日にひきおこされたチェルノブイリ原発事故
そのチェルノブイリの町で4歳のとき被爆し、孤児院で育った
主人公でありアーティスト、フョードルの調査ドキュメンタリー


原子力事故の深刻度である国際原子力事象評価尺度 (INES) について
最高レベルである「レベル7」

こういう重大な事故が起きた時には
すぐに国民に真実は知らされず、対応は遅れ
証拠や資料までが破棄、隠蔽されてしまう恐れもあるというのは
社会主義国であろうが、資本主義国であろうが
政府や政治家のやることは同じだと考えさせられてしまいます


しかし日本では政府に抗議デモしても、街角でヘイトスピーチをしても
言論の自由は認められていますが、現代においてもウクライナではそうはいかない
ソ連が時代の精神がまだ刻まれ続け、警官や軍隊に暴力によって押圧され
殺されてしまうこともあるのです





チェルノブイリ原発事故の真実を突き止めようとしたフョードルは
実際にチェルノブイリに行き、超水平レーダー「DUGA-3」の存在を知ります
それは「ロシアのキツツキ」と呼ばれた怪電波の発信源でした
そして原発事故は「DUGA-3」の軍事的失敗から目を逸らすため
意図的に仕組まれた爆発だったという仮説を立てるのです

フョードルの仮説の真偽は別として、ロシアならやりかねない恐ろしさは感じます
廃墟となった町、床一面のガスマスクの山などは衝撃的な映像で
この後何世紀にも渡って決して収束することがない
最悪の事故なのだと改めて認識させられるのです


そして第三次世界大戦の火蓋も、一歩間違えれば
簡単に落とされるかもしれないという事実を知らされます

中国やロシア、北朝鮮、そして新しいアメリカという
現在の国際情勢の混沌さと先行きの見えない恐怖についても
いろいろと考えさせられるのです

この世で一番怖いのは、核より人間のほうなのでしょう

だからといってフョードルは頑なわけではなく
前衛的な自身のアートも披露しつつ
当局に目を付けられると怖くなって国外逃亡
再びデモに乗じて帰国し、国民を扇動するという優柔不断さで
ラストはどこか青春映画のようでありました


ジャケットのイラストもいいですね