ギター弾きの恋(1999)




「オレは世界で二番目にギターが上手い
 一番上手いのはジャンゴ・ラインハルト


うわあ、見事に騙されました(爆)
ウディ・アレンお得意のインタビュー形式で物語は進行し
いかにも評論家が真面目にエメット・レイという人物を語ります
(ナット・ヘンホフという高名なジャズ評論家だそうです)


実は実在のモデルがいるわけではない偽伝記映画
作り話をいかにも実在の人物の逸話であるかのように見せた
演出はさすがでございます

腕は一流のギタリスト、エメット・レイ(ショーン・ペン)
しかし時間にもお金にも女にもだらしがない

ある日ドラマーのビルと海岸で二人組の女の子をナンパしました
コインの賭けで負けたエメットは、背は低いし顔もタイプでない
おまけに頭はヨワいし、口もきけないという
ハッティ(サマンサ・モートン)とデートする羽目になります





そんなハッティだけど、エメットの好きな列車を見ることや
銃で鼠を撃つ遊びにも付き合ってくれるし、ベッドも積極的
「抵抗しろよ」には笑いました
(オトコって実は抵抗してほしいのかしら?笑)


だけどエメットは真実の「愛」にいつも怯えていました
しかも見栄っ張りな男でした
ハッティの純粋さと優しさが好きで、長く付き合い尊敬もしたけれど
天才アーティストの自分にふさわしいのは
洗濯屋の娘ではないと自惚れていたのです

ある夜明け前、500ドルを置いて
エメットはハッティを棄てます





そして作家で美人で令嬢のブランチ(ユマ・サーマン)と
衝動的に結婚するのです

ブランチは皆に見せびらかせる、ゴージャスで美しい完璧な女性
しかし派手しか共通点のないふたりの破局は目に見えていました
結局ブランチはギャングと浮気をし
エメットは町の笑いものになってしまいます


ジャンゴ・ラインハルトが一瞬姿を見せるのは心憎い演出
ジャンゴを目指し、だけど成功することなく
消えていったギタリストはどれくらいいるのでしょう


ニュージャージーでレコーディングのとき
エメットは洗濯屋に行き、ベンチに座って食事するハッティと会います

潮時だった、身を固めない主義なんだ
嫌いじゃなかった、寝言で名前を呼んだ・・・
そんな長い長い言い訳のあと
「ニューヨークに一緒に来ないか」とハッティを誘うのです

そっと「ミミズの字」のメモを渡すハッティ





ふたりが別れてどれくらいの年月が経ったのでしょう
500ドルと一緒に棄てられたハッティはどれほど泣いたことでしょう
エメットの結婚を知り、傷つき苦しんだことでしょう
やっと立ち直って見つけた小さな幸せを奪ってはいけない
エメットが一番それを知っているのです


「道」ではザンパノがジェルソミーナの死を知り泣き崩れる
ここでは「死の別れ」が用意されてない分
あきらめきれないという、別の苦しさがまっていました

誰にでも時々ある「I made a mistake!!」

分身であるギターを粉々にして
エメットはどこかに消えてしまいます


音楽と恋は、人を幸せにして、そして泣かせる


アレン作品のなかでは、かなり感動的だと思います
なのに全て「うそっぱち」だったというユーモアのセンス(笑)
まいりました


【解説】allcinemaより
1930年代、シカゴ。派手で目立ちたがり屋のエメットは、才能に恵まれたジプシージャズのギタリスト。演奏が始まると誰もがうっとりとその美しい音色に聞きほれる。しかし、一方で彼は娼婦の元締めという顔をもち、女遊びにも目がなく、芸術家にありがちな破滅的な生活を送っていた。そんなある日、エメットはひょんなことから口のきけない娘ハッティと出会い、次第に愛するようになるのだが……。W・アレン監督、S・ペン主演。ジャズをふんだんに取り入れたラブ・ストーリー