マンチェスター・バイ・ザ・シー(2016)




大切な人を亡くしたとき
どうして人はぶつかり合ってしまうのか

女性は未来に進めるのに
男性はどうして過去にしか生きられないのか

そんなことを考えながら

見た



人口5千余りの美しい港町
ほとんどが顔見知りの小さな共同体


ボストンで配管工や電気修理などの
何でも屋で働くリー(ケイシー・アフレック
彼は仕事も真面目だし、見た目も悪くない
しかし心を閉ざし、すぐキレてしまう性格
そのためトラブルになってしまうこともたびたびあります

そんな彼にある日、兄が心臓発作で倒れたという連絡がきます
病院についたときにはすでに手遅れ
すぐには死を受け入れられず、泣いたりもできない
知らせる人は?葬儀は?どうしたらいい?何もわからない
そして兄の遺言で、甥のパトリックの後見人にされていたことを知ります

友人もいる、ホッケーもある、町に残りたいパトリックと
町を去り、ボストンに戻りたいリー

どうしてリーが町に留まれないのか、不機嫌なのか
その答えが徐々に解き明かされます
かっての彼はよく喋り、子煩悩で妻を愛し
友人と酒を飲んでは大騒ぎする、そんな男だったのです





でも自分のバカのせいですべて失ってしまった
自殺するチャンスもなかった
町で元妻と偶然会ったとき
妻もまた罪を背負い、後悔して生きてきたことを知ります

火事、取調室のあと
妻の懺悔のシーンには胸が詰まります
人には、乗り越えられないこともあるのです

それでも故郷での生活で、取り戻せたこともありました
それはやさしさや妥協という、わずかなことですが
パトリックのため、親友のジョージ夫妻に相談をします
(ジョージさんが本当にいい人!)


静かな作品なのですけれど
時にコミカルなシーンもあり
とてもうまく構成されています

キャッチボールのシーンは、リーとパトリックの不器用さ
そしてふたりの距離感が縮んだことをうまく表現していて唸る
ツンとくるような景色、雪をかく音、寒さ
「冬」の映像もいい


悲劇からは逃げられない、悲しみは時間で解決しない
向き合って生きていくしかない現実を
そっと見つめていく映画

感動を押し売りしないという傑作
お気に入りです







【解説】allcinemaより
ジェシー・ジェームズの暗殺」「ゴーン・ベイビー・ゴーン」のケイシー・アフレックが心に深い傷を抱えた主人公を好演し、アカデミー主演男優賞をはじめ主要映画賞を総なめするなど各方面から絶賛された感動のヒューマン・ドラマ。ある悲劇をきっかけに故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに背を向けて生きてきた孤独な男が、兄の突然の死で帰郷を余儀なくされ、過去の悲劇と向き合わざるを得なくなる悲痛な姿を、ほのかなユーモアを織り交ぜつつ切なくも優しいタッチで綴る。共演はミシェル・ウィリアムズカイル・チャンドラールーカス・ヘッジズ。監督は「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」「マーガレット」のケネス・ロナーガン
 アメリカのボストン郊外でアパートの便利屋をして孤独に生きる男リー。兄ジョーの突然の死を受けてボストンのさらに北の港町マンチェスター・バイ・ザ・シーへと帰郷する。そしてジョーの遺言を預かった弁護士から、彼の遺児でリーにとっては甥にあたる16歳の少年パトリックの後見人に指名されていることを告げられる。戸惑いを隠せないリー。仕方なくパトリックにボストンで一緒に暮らそうと提案するが、友だちも恋人もいるからここを離れることはできないと激しく拒絶され途方に暮れてしまう。なぜならばリーには、この町で暮らすにはあまりにも辛すぎる過去があったのだが…。