愛と哀しみの果て(1985)

 
原題は「アフリカの日々」(Out of Africa
同じ作者の「運命譚」(Anecdotes of Destiny)という作品は
バベットの晩餐会」のタイトルで映画化されました
 
 
大人になって改めて見たほうが、良かったですね
文芸的で、哲学的、そして自然回帰
だからといって、決して難解ではありません
 
同じくポラック監督 の「大いなる勇者」にも
大自然が舞台ということで、どこか通じているものを感じますし
 
自由を求め放浪癖のある男と、家を守るため働く女というのは
西部からアフリカに場所を変えた
「シマロン」(1931)のようでもあります
 
 
20世紀初頭のデンマーク
オールド・ミス寸前のカレン(ストリープ)に社交界での居場所はありません
そこで、友人であるブロア男爵(ブランダウワ-)に結婚を申し込み
アフリカで一緒に暮らすことを提案します
 
しかしブロアは、男だけの社交クラブに、狩りに通い詰め
家は空けっぱなし、女性関係も絶えることはありません
カレンの莫大な財産も勝手にコーヒー豆の栽培につぎ込んでしまう
そんな身勝手な遊び人でも、カレンは夫を憎むことはしませんでした
 
これは妻というよりは、母親の愛情に近い気がします
カレンは母性の強いタイプなのでしょう
夫を激怒したり、罵ったりするような「女」は出てこない
こんな馬鹿な男でも、つい赦してしまうのです
 
さすがに梅毒までうつされ
子どもの産めない身体にまでなってしまったときはショックでした
それでも和解しようとしたのに、ブロアはまた浮気をしてしまう
ついにカレンは別居を決意します
 
そんな辛い時、心の支えになってくれたのが
冒険家でガイドのデニス(レッドフォ-ド)でした
デニスはカレンの作った物語を聞くのが好きでした
ふたりはアフリカの大地を旅をし、ワインを飲み、語りあい
そして愛し合うようになります
 
 
 
しかし、デニスもまた束縛を嫌い自由を求める男なのです
カレンに捕らえられたマサイ族の話をするデニス
マサイ族は牢に閉じ込められると死んでしまうというのです
 
「マサイ族は未来のことが考えられない」のだと
そしてそれは、デニスのことでもあるのです
 
そんなデニスに、愛されているという実感が欲しいと
不満をぶつけたときのカレンには、さすがにグッときます
ひたすら待つしかない女の身の辛さ
 
デニスを忘れるためかのように
そして多額の借金を返すために
ますます農園の仕事に打ち込むようになったカレン
 
 
しかしついに
何もかもを無くしてしまう時がやってきます
 
そもそも、人間がずっと手に入れておけるものなど
最初から、なにもあるわけがないのです
 
 
カレンがデンマークに帰る日、デニスはカレンの望みを叶えてあげようと
ひとりぽっちで去ろうとしている彼女を、助けたかった
私はそう思います
 
カレンにプロポーズするつもりではなかったのかと
 
 
 
だから死んでしまった・・・
 
 
 
愛とはなにか
友情とはなにか
自由とは
 
ひとつひとつのセリフを思い出すたび、凄くいい
心に響く言葉がたくさんありました
「不倫もの」、と、一言では片づけられない愛の形、叙情詩
 
 
男と女の関係を、好きだから、とかいう感情論でなく
 
理屈だらけで考えたい、納得する答えを探したい
そんな人に向いている作品だと思います(笑)
 
 

 
【解説】allcinemaより
 20世紀初頭のアフリカを舞台に、愛と冒険に生きたひとりの女の半生を描いた一大ロマンス。スウェーデン貴族と結婚し、ケニアに渡って来たデンマーク人の令嬢カレン。だがそこには幸せな結婚生活は無く、農場経営も思うように進まない。そんな彼女の前にサファリのガイドを務めている冒険家が現れた……。波乱万丈のストーリー、アフリカの雄大な景観、ストリープとブランダウアーの丁々発止の演技合戦と見どころは多いが、あまりにも上映時間が長すぎる。アカデミー作品・監督・脚本・撮影・作曲・美術・音響と主だった部門を独占した作品ではあるものの、時として冗漫な語り口は万人向けとは言い難い。