仮面/ペルソナ(1966)

クルシフィクション(キリストの貼り付け)
羊の屠殺、蜘蛛、ゲットー、焼身自殺
これは何を意味するのでしょう
冒頭から謎を問いかけられます
 
裸の少年はエリザベート(アルマ)の子かと思いました
母親に捨てられた子が
母親を求めるのは当然のような気がするから
 
突然、原因不明の失語症になった女優エリザベート
世話をまかされた若い看護婦アルマ
 
理事長の勧めで、二人は療養のため
海辺のサマーハウスで過ごすことになります
アルマはエリザベートに心を開き
自分の身の上話や、恋愛観を話します
 
そしてだんだん親密になっていく
 
ついにアルマはエリザベートに自分の秘密を打ち明けてしまいます
禁断の快楽と、堕胎
秘密の告白はエリザベートの快感になる
 
これは女性の多面性を描いた物語なんだろうな
ひとりの女の中には、いくつもの女がいる
恋人、娘、妻、母、仕事に優しさに怒り
美しい顔に隠れた魔女
 
それらの人格は、時に仲良く時には反発しあう
でも離れられない
 
女は罪を隠して生きていく
どんな大罪を背負っても生きていく
 
女はキリストのようには、羊にはならない
自分の別の人格が救ってくれる
そういうことなのでしょうか
 

 
【解説】allcinemaより
ベルイマンノルウェーの劇壇で見出したウルマンの初主演作で、容貌のよく似たアンデルソンと凄絶な演技合戦をしている。脚本もそのため名匠自ら書き下ろしたもの。舞台女優のエリザベート(ウルマン)は、仕事も高く評価され、私生活でも夫は理解があり、子供にも恵まれて、何不足ない暮らしをしていたが、舞台上で言語障害を起こした後、全身麻痺に陥ってしまう。一夏の転地療養を勧められ、看護婦アルマ(アンデルソン)と共に海辺の女医の別荘を訪れたエリザベート。不明瞭な彼女の言葉をよく理解し、懸命に尽くすアルマ。やがて二人は患者と看護婦という結びつきを越えた所で親しく接するようになる。その意識の共有。エリザベートの出産話はアルマにつわりの体験をさせ、アルマの肉欲が久しく夫と寝ていなかったエリザベートの快感を操る。ある日アルマは、かつていきずりの男たちと浜に戯れ、その結果妊娠した子を堕胎したトラウマを告白する。このことをエリザベートは女医への手紙に綴ってしまい、それを見たアルマと仲違いするが、憎しみすら互いの同体感覚を呼び覚ますのだ。しかし、この二人の関係もあっけなく終わりを遂げるときが来てしまう……。西洋人に根深い“ドッペルゲンガー”観へのベルイマンなりの新解釈と呼べる作品で、鮮烈な官能が名手ニクヴィストによる黒白画面に迸っている。