ムーンウォーカー(1988)




アルバム「BAD」の楽曲を中心に
黄金期のマイケルが主演、製作総指揮を果たした作品。

ライブシーンとショートフィルム(マイケルのPVはこう呼ぶそう)を
つなぎ合わせたものです。
「smooth criminal」「カム・トゥゲザー」・・
歌とダンスには、マイケルファンでなくとも感動しますね
彼の天才ダンサーとしての才能には驚かされます。

それ以外の「映画」部分のほうに関しては
確かにいい出来とはいえないでしょう。
そもそも、映画なのか何なのか分からない。
何がしたかったのかも分からない。

でもこの意味のないようなシーンにこそ
マイケルの描きたかったことがある・・
鑑賞しているうちに、そんな風にも思えてきました。

マイケルがファンに追いかけられる
コマ撮りのアニメーションのキャラはかなりのグロテスクです。
ウサギに変装してファンから逃亡するマイケル。
ファンから逃げ切ったマイケルの前に現れた
マイケルが変装したはずのウサギ。
二人は踊りだす・・

この頃のマイケルは自分の部屋にマネキンを並べ
それと会話して寂しさを紛らわせていたそうです。
そのことを知ると、あのウサギはマイケルが妄想で作り出した
本物の友達なのではないでしょうか。

少女が悪の帝王のボスに捕まり殴られるのを
ロボットに変身してやっつける、というのは
強い相手に抵抗する手段としては、かなり幼稚な発想。
でも、こういう変身願望が
マイケルを整形依存にさせたのかしらとも
考えてしまいますね。

少女はマイケル本人の姿、悪の帝王は父親とも思えます。
マイケルが父親からスパルタ教育をされていたというのは
有名な話ですし。

この作品から間もなくしてマイケルは
幼児虐待の容疑や幼児嗜好のスキャンダルで
世間を賑わすようになってしまいます。

でも私は幼児嗜好というより
ステージに立つ時以外は
マイケルそのものが子どもなんだと感じる。

彼にとって大人は自己欲の塊なのです。
子どもたちだけが彼にとってはピュアで対等な存在。

マイケルがマイケルのために作った映画。

映画としては駄作になるでしょう。
でも、夢のワンダーランドの先に漆黒の闇が見える
そんな深い作品だと思います。



【解説】allcinemaより
子供好きなM・ジャクソンらしい、ファンタジックなSFアドベンチャー。世界征服を狙う悪の帝国。彼らはそのターゲットとして、子供をドラッグ中毒にする作戦を展開する。それを知ったマイケルは、巨大ロボットに変身、悪の帝国の野望を叩きつぶす……。ビデオ・クリップとして観る分には楽しめるが、ひとつの映画としてとなるとちょいとキビシイものがある。