鍵(1959)




カメラは宮川一夫さん
撮影はさすが、一見の価値ありです。

機関車の連結だけで
まるで男女の情交を連想させます。
全編に漂う隠微な雰囲気
印象的なシーンが多いですね。

物語はテーマである「老いと性」を
ブラックコメディー的に描いています。

古美術鑑定家として有名な剣持は
脚が不自由で男としても不具なのでしょう。
一方、まだまだ妖艶な魅力を持つ妻の郁子。
剣持は毎晩妻を酒で酔わせ、裸にし写真を撮る。

これはどういう変態なのでしょう(笑)
鉄道マニアでいう「撮り鉄」みたいな「撮り妻」?

剣持の名声を利用して出世したい青年医師の木村は
剣持の(おブスな)娘の敏子と婚約しています。

そんな木村に郁子の裸の写真の現像を頼む。
郁子と木村が不貞を働くようにしむける・・
その嫉妬で自分の情熱と性欲を
高めようとしているのです。

努力の甲斐あって?興奮と性欲は蘇ってきたけれど
その反動で脳溢血になり、寝たきりとなってしまいます。
やがて死んでしまう剣持。

「死んだ・・」
静かにほくそ笑む郁子。
彼女は木村との新しい生活を望んでいたのです。
京マチ子さんのこの眉毛はやっぱり怖い・・)

それでも最愛の妻の裸を目に焼き付けて逝った剣持は
本望な死に方をしたと思います。
幸せだったのではないでしょうか。

「腹上死」は男のロマン・・
この作品の解釈がこれでいいのかどうかは
わからないけれど。

全編ドロドロしていましたが
婆やの北林谷栄さんはよかった。
ラストは「マダムと泥棒」みたいでしたが
おかげでスッキリと見終われました。



【解説】ウィキペディアより
『鍵』(かぎ)は、谷崎潤一郎の同名の小説(1956年発表)を原作として、1959年(昭和34年)に市川崑が監督し、大映東京撮影所が製作、大映が配給して公開した日本の長篇劇映画である。当時の「映画倫理管理委員会」(新映倫、現在の映画倫理委員会)は同作を成人映画に指定し、18歳未満の鑑賞を制限した。