地獄門(1953)

 
 
朱、青、緑・・・その深い色彩はアート。
美しい王朝絵巻を眺めているようです。
(眺めたことはないけれど。笑)
 
第7回カンヌ国際映画祭グランプリ
第27回アカデミー賞名誉賞と衣装デザイン賞受賞
欧米の方はこういう綺麗な作品が好きそうです。
納得の受賞だと思います。
 
でもストリーの方はというとドロドロ
今でいうストーカーの果てです。
古い作品なので展開はスローですが
終盤は結構ハラハラとしてしまいました。
 
平安末期の京都、平清盛の権力が衰えはじめ
反乱がおこるようになっていました。
反乱のさなか、皇族を逃がすために身代わりとなった
今でいう宮内庁の職員のような女性、袈裟。
 
袈裟を運ぶ荷車の護衛についた武士
盛遠は彼女に惚れてしまいますが
袈裟は人妻でした。
 
どうしても諦めきれない盛遠。
しつこくつきまとい、命まで奪うと脅し
夫を裏切ることを強要します。
 
夫の渡はやさしく立派な男でした。
裏切るなんてできない。
だけど短気で乱暴者の盛遠は
何をしでかすかわからないのです。
 
何も言わない袈裟・・・
夫に酒を飲ませる
いつもと違う寝床に誘う。
 
どうするつもりなのだろう
渡を棄てて出ていくのか
盛遠と逢引きするのか
 
握りしめる数珠
袈裟が何を考えているのか
まだわかりません。
真夜中、屋敷にやってきた盛遠・・
 
 
「おまえは死ねばそれですむが、生き残った自分はどうなるのだ」
死ねない哀れな男がふたり残る。
 
 
チャンドラーの小説に
「最初のキスには魔法があるんだ」というセリフがありました。
盛遠も魔法にかかってしまったのでしょう。
でもかかるなら、素敵な恋の魔法のほうがいいですよね。
好きな人を困らせるべきではないのです。
 
現在でもストーカー事件は後を絶ちません。
実際に凶悪な犯罪も多くあるので
この作品を見ても、やはり後味は良くないですね。
 
でも色彩も撮影も、カラーは凄い。
製作者の映画を作る本気度が感じられる作品でしょう。
 

 
【解説】allcinemaより
都で起こった反乱から上皇とその妹を逃すため、平康忠は身代わりの女・袈裟を荷車に乗せて盛遠を護衛に付けた。ところが盛遠は夫がある身の袈裟に惚れてしまい……。最優秀外国語映画としてアカデミー特別賞の他、カンヌ映画祭グランプリを獲得している。原作は「袈裟の良人」。