映画女優(1987)

 

 
 
田中絹代さんといえば「楢山節考(ならやまぶしこう)」で
歯を折るシーンのため前歯を何本か抜いて演技したことで有名です。
 
ここ数年で彼女の若かりし日の作品を見るようになって
その美しさにびっくりしました。
本当に綺麗な顔って国や時代が違っても
何十年たっても色あせずに綺麗なんですね。
 
田中絹代さんの主演作を見れば、
サイレントからトーキーに
白黒からカラーに
戦前から戦後に
日本映画の歴史を見ることができるのです。
 
前半はさすがに駆け出しの若い女優を演じたのは
いくら童顔な吉永小百合さんでも無理がありましたね。
撮影当時40歳で15歳を演じたのはあっぱれではありますが。
 
清水宏監督との同棲、しかし清水監督の女好きと喧嘩ばかりで破局
渡辺徹さんと吉永さんでは全く釣り合いませんでしたね。
暴言に暴力を振るう・・
そんないかにも格下な男という感じだけはでていましたが。
 
後半の溝口健二監督役の文太兄ぃとの絡みらへんからは
だいぶ見ごたえが出てきました。
お互い好意をもちながらも、演技のほうが優先。
女優としての映画作りに対する執念。
 
もてはやされ、つきおとされ
清純派国民的スターから、老醜とまで酷評されるようになりながら
復活
数々の大きな賞
なのに晩年は借金を抱えて生活に困窮していたといいます。
 
普通の人間にはひとつの人生しかないけれど
天才は、幸福も、苦労も、愛も、裏切りも、金持ちも、貧乏も
たくさんの人生を抱えて生まれてくるのでしょう。
 
67歳で亡くなる前には病床で
「目が見えなくなっても、やれる役があるだろうか?」と囁いたそう。
 
 田中絹代さんを演じるなんて、吉永さんでもきっと畏れ多かったでしょう。
だだストリーはイマイチでもう少し捻ってほしいところでした。
有名監督の貴重な映像も多く出てくるので
史実的な作品と思って見るのがよいでしょう。
 

 
【解説】allcinemaより
日本映画を代表する大女優・田中絹代の半生を市川崑監督、吉永小百合主演で描く。大正14年。女優を志す少女・田中絹代は蒲田撮影所の大部屋女優として採用された。新人監督・清光宏の強い推薦のおかげだった。清光作品ではいつも良い役がつく絹代に、同僚の嫉妬が集まるが、絹代は一所懸命にがんばった。やがてそんな絹代を五生平之監督が「恥しい夢」の主役に抜擢した。ライバルに絹代をとられた清光は絹代に強引に迫り、やがて二人は同棲生活を始めるのだが……。