男はつらいよ 寅次郎恋やつれ(1974)


 
 
 
シリーズ13作目
マドンナは吉永小百合さん。
 
「いくら心の中で思っていても、それが相手に伝わらなかったら
それを愛情って言えるかしら? 」

よかったですね、この「男はつらいよ」も。
特においちゃんの村松達雄さんと
マドンナの父親の宮口精二さんが凄くいい。
 
ツウのムービーファンからは初代おいちゃんが人気のようですが
私は村松さんのおいちゃんもとても好きです。
亡くなった両親の代わりに寅さんとさくらちゃんの面倒をずっとみてきて
「甘やかし過ぎたのかもなあ」なんてため息まじりに言うところなんて
情と諦めの両方の気持があって、とても親心を感じます。
 
宮口さんも巧い、タバコの灰がぽろっと落ちるシーンなんて凄いタイミング。
演技の神さまが降臨したと思うくらい。笑
「とらや」で娘と逢ったときの、チラっと目を合わせて
すぐまた目をそらす・・
頑固で口下手な父親が不器用に娘と会話する場面は泣けます。
 
村松さんも宮口さんもとにかく自然
もう素としか思えない、素晴らしい演技だと思います。
 
「ゆかた・・ きれいだね・・・ 」
 
浴衣姿の歌子ちゃんの足首を一瞬映すカメラも逸品。
思わずチラっと見てしまう寅さん。
目の前にあるのは綺麗な花火と無邪気な歌子さん。
あまりにも可憐すぎて、好きになることさえ諦めてしまう。
その美しさを汚れた自分は壊せないのです。
渥美さんの切ない表情がたまりません。
 
もしかしたら、吉永さんがマドンナだから
男優陣が演技でこれだけ頑張ったのかもしれませんね。笑
彼女はそれだけのオーラを持っているのでしょう。
「歌子のテーマ曲」もマドンナにぴったりで名曲だと思います。
山本直純さんも頑張った。笑
 
これが松村達雄さんがおいちゃん役で登場する最終作品。
う~ん、寂しい。
シリーズの初期作品もこの13作目が終了作品になるそうです。
次作品からはシリーズ中篇作品になります。
 

 
【解説】allcinemaより
国民的人気シリーズ「男はつらいよ」第13作目で、マドンナ役は「男はつらいよ 柴又慕情」に引き続き吉永小百合が演じた。何と本作では寅さんが二人の女性にふられてしまう。
 ひなびた温泉街の旅館で働く車寅次郎は、夫が蒸発中という人妻の絹代と結婚しようと心に決め、故郷の葛飾柴又に戻ってくる。結婚話を進めようと、妹さくらとタコ社長を連れて温泉街へ引き返す寅次郎だったが、絹代から夫が帰ってきたとうれしそうに告げられ、再び旅に出るのだった。たどり着いた津和野で偶然、寅次郎は歌子と再会する。父の反対を押し切って陶芸家と結婚した歌子だったが、その夫を病気で亡くしたのだった。歌子はとらやの二階を間借りすることになった。寅次郎は歌子と父親との関係を修復しようとするのだが…。