アメイジング・グレイス(2006)

 
 
誰でも耳にしたことがあるだろう有名な曲「ア メイジング・グレイス」。
多くのアーティストがカバーしていて、とてもロマンチックに聞えますが
本当は、のちに牧師となった奴隷船の元船長が
自分の罪を悔やんで作詞した賛美歌だったのですね。
 
この作品、曲の誕生秘話の物語かと思って鑑賞しましたが
そうではありませんでした。
奴隷貿易廃止に尽力した政治家ウィリアム・ウィルバーフォースの
人生を描いた伝記ドラマだったのです。
信仰心が強く争いが嫌いなウィルバーフォースは
奴隷貿易の実態を知り大きなショックを受け奴隷貿易を廃止しようと考えますが
議会はまったく彼を相手にしてくれません。

 
「砂糖を使うことを止められるか?」

「 我が国だけが奴隷制を廃止しても意味が無い
その利益をフランスが横取りするだけだ」
 
「彼の話は正しい。
しかし直ちに撤廃することは国を破綻に追い込むことになる。
徐々に無くしていくように考えよう」

 
当時の大英帝国は、奴隷の労働力によって成り立っていました。
また奴隷商人と繋がっている政治家も多くいました。
華やかな貴族の暮らしや
議員の優福な暮らしの裏には奴隷貿易制度があったのです。
 
それでもウィルバーフォースは長い年月をかけ
さまざまな困難や病を克服しながら
奴隷貿易廃止法の制定を実現するのです。
 
正しいこととわかっていても、実行するのは難しいですよね。
私たちも、原発は廃止したほうがいいのだろうと思っていても
電気を使っています、真っ暗闇で暖房のない生活はできない。
当時のイギリスやアメリカも奴隷の労働力がなければ
経済が成り立たなかったのでしょう。
 
しかしそれを勇気をもって改革しようとした政治家がいたのです。
そして、後の首相でもあるウィリアム・ピットとの友情の素晴らしさ。
 
法が可決された時に、敵対していた議員が拍手を送る姿は良かった。
紳士的です、イギリス人が自らを誇る姿でしょう。
 
地味ですが、かなりの良作。
学校の世界史の授業で中高生に鑑賞させてあげたいですね。
 

 
【解説】allcinemaより
 名曲『アメイジング・グレイス』誕生に秘められた感動の実話を映画化した伝記ドラマ。18世紀のイギリスを舞台に、恩師が作詞した『アメイジング・グレイス』を心の支えに、奴隷貿易廃止に尽力した政治家ウィリアム・ウィルバーフォースの人生を描く。主演は「キング・アーサー」のヨアン・グリフィズ、共演にロモーラ・ガライベネディクト・カンバーバッチアルバート・フィニー。監督は「歌え!ロレッタ愛のために」「愛は霧のかなたに」のマイケル・アプテッド
 18世紀のイギリス。博愛精神にあふれた青年ウィリアム・ウィルバーフォースは、イギリスの収入の多くが奴隷貿易によるものであることに心を痛めていた。若くして国会議員となったウィルバーフォースだったが、すべての人々の心の救済を信仰に求めて聖職者の道を選ぶべきか思い悩んだとき、政治の世界にとどまるよう後押ししたのが恩師である牧師ジョン・ニュートンだった。かつて奴隷船の船長をしていたニュートンがその罪を悔いて作詞したのが『アメイジング・グレイス』。ウィルバーフォースはこの曲を心の支えに、政治家として奴隷貿易廃止を懸命に訴え続けるのだったが…。