明日への遺言(2007)


 
 
冒頭の第二次大戦時の空襲後の写真とフィルムは衝撃的でした。
山積みになった、ただ人間の形をした真っ黒な大量の死体。
大やけどを負って治療する人々の無表情。
苦しいだろう痛いだろうに声をあげることもありません。
地獄を見た感情のない瞳。
 
空襲による無差別殺戮、広島・長崎原爆投下・・
この先どんな展開があるのだろうと恐ろしい気持ちで鑑賞しましたが
映画としては、ひたすらの退屈な戦争裁判で終わってしまったのは残念でした。
いろいろな考えに対する、いろいろな配慮があったのは伝わりましたが。
 
 アメリカのGHQ側は名古屋空襲の際に日本軍に撃墜され
B29からパラシュートで脱出した捕獲搭乗員38名を
裁判なしで斬首死刑にした責任について迫ります。
一方の日本軍の岡田中将は
無差別爆撃自体が国際法違法なのだから処罰したと主張します。
 
勝利国と敗戦国、平等な裁判など行われるわけもないのですが
お互いがエリート、国や部下を思う気持ちはもちろん同じ。
 
「全責任は命令したわたしにあり、部下には責任はない!」
 
岡田中将の軍人としての死刑を覚悟した崇高な態度に
検事も裁判官もフェアネスな気持ちになっていきます。
特に敵国にもかかわらず公正な弁護をした
フェザーストン主任弁護人(ロバート・レッサー)が実に素晴らしい。
法廷ものが好きな方にはオススメでしょう。
 
軍需基地かもしれない・・そんな当時と同じ理由で
民間人の住む場所が空襲されている国や地域が今もあります。
 
戦争は怖くて恐ろしくて、そして何世紀たっても恨みを忘れないもの。
同じ過ちを繰り返さないためには、どうしたらいいのでしょう。
 
やはり真実を残し伝えることかも知れません。
 
 

 
 
【解説】allcinemaより
 第二次大戦中、名古屋への無差別爆撃を実行したB29搭乗の米兵を略式裁判で処刑し、戦後その罪を問われB級戦犯として裁かれた東海軍司令官・岡田資中将が、部下を守り、自らの誇りを懸けて挑んだ法廷での闘いと、それを見守る家族との愛と絆を描くドラマ。原作は大岡昇平のノンフィクション『ながい旅』。監督は「雨あがる」「博士の愛した数式」の小泉堯史。主演は藤田まこと、共演に富司純子
 1945年5月、米軍による名古屋市街への絨毯爆撃が行われ、その際撃墜されパラシュートで降下した米軍搭乗員38名が日本軍により拘束される。東海軍司令官・岡田資中将は、彼らを略式裁判によって処刑する。終戦後、岡田中将をはじめとする被告人20名は、捕虜を殺害した罪で起訴された。これに対し岡田中将は、搭乗員はジュネーブ条約の定める捕虜ではなく、無差別爆撃を行った戦争犯罪人であり、かつ、当時の状況では略式の手続きもやむを得なかったとその正当性を主張、この裁判を“法戦”と名付けて、徹底的に争う意志を貫く一方、部下の行為も含めすべての責任は司令官である自分にあると、部下を守り全責任を負う論戦を展開していくのだった。