ディア・ドクター(2009)


 
 
あなたは私を愛していたから助けようとしたんですか?

 
なにかから逃げて過疎地の無医村にやってきた
間違いなく悪徳なニセ医師の伊野。
 
もしかしたら、看護師も村人も彼がニセ医者だと知っていたかも知れません。
怪しい・・・そう思っていたでしょう。
 
それでも、いないよりいたほうがマシなのです。
話しを聞いてくれる、薬をもらえる、大きな病院に紹介状も書いてもらえます。
診療所の待合室はいつも人でいっぱいでした。
 
伊野は医師としての強い使命感をもっていたわけではありません。
最初はただ簡単に金儲けをするのが目的だったのでしょう。
 
患者との約束を守りぬくこともできない
嘘をつき通す信念もない
責任の重さにも耐えられない
ただ逃げてばかりの嘘つきでダメな男・・
 
しかし村人はいたらないニセ医者に優しかった、家族のように接してくれた。
ついつい長く村に滞在してしまった。
しかしついに嘘を隠し通せなくなる日がやってきます。
 
「あのニセモノが帰ってきたら、
俺たちがニセモノだと言って追い出されるかもしれないなあ」
 
宝石も、ブランド物も、高級食材も、そして人間も
私たちはどこで本物とニセモノを見分けたらいいのでしょう。
 
たとえニセモノでも何かの役に立てば、誰かを幸せにできれば
その中には、何かの本物が含まれているのかもしれませんね。
 
八千草薫さんがいくつになっても可愛いです、マドンナぶりを発揮しています。
井川遥さんはCMや雑誌のモデルでもたくさん活躍していますが
映画がやっぱりいいですね、素敵でした。
 
多くの方が指摘されてるとおり、手塚治虫氏の「ブラック・ジャック」のなかの
「古和医院」という作品とエピソードがとてもよく似ています。
この作品も、漫画のように、老いたニセ医者が医者になるために
医学部に入学するシーンで終わるラストのほうがもっと素敵だったでしょう。
 
・・それだと「ブラックジャック」と同じ話になってしまいますが。
(原作・手塚治虫でいいじゃん。笑)
 

 
【解説】allcinemaより
 「ゆれる」の西川美和監督が人気落語家の笑福亭鶴瓶を主演に迎え、過疎の進む小さな村で住民から信頼され慕われていた一人の医師を巡って巻き起こる騒動を描いた異色のヒューマン・ストーリー。共演は瑛太余貴美子八千草薫
 山あいの小さな村。数年前、長らく無医村だったこの地に着任して以来、村人から絶大な信頼を寄せられている医師、伊野治。そんな彼のもとに、東京の医大を卒業した青年・相馬が研修医としてやって来る。最初はへき地の厳しい現実に戸惑い、困惑する相馬だったが、村の人々に親身になって献身的に接する伊野の姿に次第に共感を覚え、日々の生活にも充実感を抱き始めていく。そんなある日、一人暮らしの未亡人かづ子を診療することになった伊野。病気のことを都会で医師をしている娘に知られたくないからと、かづ子から一緒に嘘をついてほしいと頼まれる。しかし、それを引き受けたばかりに、伊野は次第に追い込まれていくことになり…。