狐の呉れた赤ん坊(1945)


 
 
「もう一度死ね!」
 
捨て子を苦労して育てる・・和製版「キッド」といった作品でしょうか。
おちゃらけているけど、ちょっと切ない。
寅役の板妻さんとチャーリーがかぶります。
 
しかしここは日本人同士、板妻さんの表情や演技には思わずより感情移入
してしまいますね。
赤ちゃんを見つめる優しい眼差し、病気になったときの心配そうな顔・・
粗暴な男が見せるその表情に、セリフはなくてもグッときます。
 
ラストで母親代わりになってくれたおときちゃん(橘公子)。
本当は、ただ純粋に寅のことが好きなだけなんですよね。
 
1945年製作といえば、終戦直後だったため
時代劇を作るにも負けたほうが復讐する話も、刀を振り回すのも
駄目らしかったですね。
「東京五人男」を見たときにも感じましたが、終戦直後にこのような
人情喜劇を製作するなんてきっと多くの日本人に元気を与えたかったのでしょう。
 
伏線の使い方が巧みで、かなり良い脚本。
板妻さんの演技も逸品で、オススメです。
 

 
【あらすじ】NHKオンラインより
戦後時代劇の幕開けを飾った、丸根賛太郎監督の傑作。「無法松の一生」やチャップリン映画「キッド」などに通じる人情喜劇で、阪東妻三郎の軽妙な演技が楽しめる彼の戦後の第一作。けんかと酒が好きな大井川の川越え人足・張子の寅が、きつね退治に乗り出した街道筋で赤ん坊を拾い育てるはめになる。善太と名づけたその子を必死で育てるうちに実の親子のような絆ができるが、7歳に成長したとき、善太の本当の親がわかる。