悲しみは空の彼方に(1959)


 
 
 
ダグラス・サーク監督作品を観るのは、恥ずかしながらこれが初めて。
さすが「メロドラマの巨匠」と呼ばれるだけあり、とても感動的で
素晴らしい作品でした。
 
二組の母と娘の、10年の歳月を描いた物語。
白人の夫に捨てられ、シングルマザーとして娘のサラ・ジェーンを育てる
黒人女性のアニー(ファニタ・ムーア)と
一人娘のスージーを育てながら、女優としての成功を夢見る美貌の
未亡人ローラ(ラナ・ターナー)。
コニーアイランドの謝肉祭で知り合った2組の母娘は意気投合し
一緒に暮らすようになります。
そしてお互い肩を寄せ合い、助け合いながら、娘を育てていきます。
 
この黒人女性のアニーを演じるファニタ・ムーアの存在が素晴らしい。
彼女の清貧な生き方には、実に心を打たれます。
明るく献身的。黒人であることにも、自分の仕事にも、誇りを持っています。
しかし、白人と同じ容貌の美少女に育った娘のサラ・ジェーンは
母親が黒人であることがコンプレックス。
自らを白人と偽って行動するようになります。
 
つつましく生きてきたアニーの最後の望みは、盛大な葬式をしてくれと
いうものでした。
クチナシの花で飾られた柩にすがり、母への反抗を後悔し泣き伏す
サラ・ジェーン。
そして、私も泣き伏す。笑
 
偽りの人生で、人は幸せになれるのか・・
映画のラストで私たちは、偽物の宝石がちりばめられたタイトルバックの
意味を知ることになります。
 
隠れた珠玉の名作でしょう。
 
お気に入りにINです。
 

 
【あらすじ】allcinemaより
34年にC・コルベール主演、ジョン・スタール監督で映画化された当時のベストセラーのリメイク。その際の題はズバリ「模倣の人生」。正にそんなソープオペラ的できすぎの題材を、メロドラマの巨匠サークがてらうことなく真摯に映像化し感動を誘う。L・ターナーとJ・ムーアの二人の母親がそれぞれの娘を共同生活の中で紆余曲折ありながら育て上げる話だが、ムーアは白人の夫に捨てられた黒人女性であり、白人と見分けのつかない混血の娘がいる。未亡人のターナーは初め売れない女優だが、やがて人気が出て荒んだ生活を送るようになり、S・ディー扮する娘ともしっくりいかなくなる。最初の映画化を見ていないので比較は出来ないが、より黒人のムーアとその娘を大きく扱っていると思え、それゆえ感動も深い。空虚に生きるターナーの支えになり娘との橋渡し役になる恋人を演じるJ・ギャビンも好演。