扉をたたく人(2009)

 

 
 
見事に私にとってツボな作品でした。
好みの作品って、思わずレビューが長い文章になってしまいます。
 
コネチカットで大学教授をしているウォルターが
ニューヨークの自宅に戻ると
そこにいたのは見知らぬ青年のタレクとその恋人のゼイナブ。
二人は騙され、その家を借りて住んでいたのです。
 
お互い素性も知らない者同士、しかも相手は不法侵入者。
なのに行くあてのないこのカップルを
ウォルターはそのまま家に住まわせます。
 
ウォルターとタレクは、どこかウマが合うのでしょう。
初対面から直感的に、お互いに好感を持ちます。
ふたりは真面目で善良であり、そして音楽を愛しているという
共通点がありました。
 
しかしタレクとゼイナブは、不法移民でした。
タレクは駅の改札で捕まり、収監されてしまいます。

そんなタレクを心配し
ニューヨークにやってきた母親のモーナ(ヒアム・アッバス)。
このモーナの登場で、すっかり私は物語に入りこんでしまいました。
 
ウォルターとモーナは、会った瞬間に運命を感じます。
たぶん好きになる予感。
しかし大学教授と不法滞在の移民
結ばれることのない恋なのです。

 
「忙しいふり、働いているふり、本の執筆をするふりをし
本当はなにもしていなかった・・・」
 

孤独な男性の閉ざされた心の扉。
その扉がノックされて、開かれた隙間から入り込んだ光は
彼の心を暖かな愛で満たしたのでしょう。
 
収容施設の窓口で激昂し叫ぶウォルター。
ベッドに入りこんでくるモーナ。
空港での別れ。地下鉄の駅で叩くジャンベ・・・
ひとつひとつのシーンに余韻が残ります。
 
アラビア語で愛しい女性のことを「ハビブティ」というそうです。
ふたりだけの暗号みたいでロマンチックですね。
 
4人の登場人物がそれぞれ素敵でした。
決してハッピーエンドではありませんでしたが
愛ある作品だと思います。
 
心の温もりを感じる作品。
お気に入りで。
 

 
【あらすじ】yahoo!映画より
妻に先立たれて以来、心を閉ざして生きてきた大学教授のウォルター(リチャード・ジェンキンス)。出張でニューヨークを訪れた彼は、マンハッタンの別宅で見知らぬ若いカップルに遭遇。彼らはシリアから移住してきたジャンベ奏者のタレク(ハーズ・スレイマン)と彼の恋人でセネガル出身のゼイナブ(ダナイ・グリラ)だと名乗るが…