居酒屋兆治(1983)


 
 
 
とにかく木村大作さんのカメラの素晴らしさ。
彼の撮影で、函館の街も、人物も、実に情緒があります。
唸るしかありません。
 
造船会社で総務課長に栄転したにもかかわらず、
社員をリストラするという仕事が出来ず
会社を辞め、妻とともに居酒屋を経営する兆治(高倉健)。
地元の仲間でカウンター席はいつもいっぱいで繁盛している様子です。
 
そんな兆治を想い続ける、かっての恋人さよ(大原麗子)。
彼女は、嫁ぎ先の裕福な牧場から何度も家出をします。
 
「あなたが悪いのよ・・・」
 
 
私なども好きな人と別れたときのことを思い出すと、今でも涙ぐみます。
なぜすれ違ったのか、自分がなにか気にくわない態度をとったのか
避けられる理由がわからない。
でも相手に問いただせなかった。
嫌われたくないから・・
 
終わりなんだと、「もう私のことは気にしないで」と言ったあとに、
どういうわけかトンチンカンな事を言って笑った。
その時、彼の表情が一瞬変わったのも忘れない。
なぜか急にやさしくなった・・
・・・でも戻らなかった。
 
この作品を観たら、大原麗子が自分かと思ってしまいました。
(どのクチが言ってるのかしら?笑)
恋愛って、綺麗に別れるとずっと後を引くものかもしれませんね。
もちろん、映画のように家出したり酒に溺れたりはしませんが。笑
 
兆治はさよのことが好きだったのでしょうか。
それほど愛していなかったのでしょう、やはり。
 

【あらすじ】ウィキペディアより
函館で居酒屋「兆治」を営む藤野英治。輝くような青春を送り、挫折と再生を経て現在に至っている。かつての恋人で、今は資産家と一緒になった「さよ」の転落を耳にするが、現在の妻との生活の中で何もできない自分と、振り払えない思いに挟まれていく。周囲の人間はそんな彼に同情し苛立ち、さざなみのような波紋が周囲に広がる。「煮えきらねえ野郎だな。てめえんとこの煮込みと同じだ」と学校の先輩の河原に挑発されても、頭を下げるだけの男。そんな夫を見ながら茂子は、人が人を思うことは誰にも止められないと呟いていた。