卒業(1967)




高校生の頃、試験の最終日や土曜の放課後
函館大門にある映画館に寄り
リバイバル映画をよく見ました。
500円でした。

そんななかで見る前に自分の想像していたのと
実際に見て内容のギャップが特に大きかったのは
この「卒業」と「禁じられた遊び」です。

どちらの映画も有名ですし
甘美なメロディーは誰でも耳にして知っています。

そして「卒業」といえばこの花嫁を教会から連れ出すシーン・・
この映像に政略結婚させられそうな恋人を悪人から救った
純愛を貫いた、そんな物語だと思っていたのです。

確かに名作なのでしょうが私のガッカリ感は大きかった。
エリートコースの大学は卒業したけれど
仕事も勉強もやる気がおきない、人間関係も面倒な青年。

両親の友人でもあるロビンソン夫人は
そんな無気力なベンジャミンを誘惑します。
最初は戸惑うベンジャミン、だけどロビンソン夫人の挑発に
大人の女性の余裕に、色香に、やがてのめりこみます。

しかしロビンソン夫人の娘、エレーンと知り合ったことで
ベンジャミン心は一気にエレーンに傾いてしまいます。
最初のデートでエレーンに嫌われるために入ったいかがわしいお店
そこで彼女を泣かしてしまう。
純粋で綺麗なものを汚してしまったような罪悪感。
彼女を守らなければいけない、傷を癒さなければいけない
そんな気持ちになってしまったのでしょう。

しかし情事を重ねた女性の娘
そのことはエレーンの知るところとなり
エレーンはベンジャミンの前から去ります。

ベンジャミンはエレーンを追いかけていき
そしてストーカーと化していきます。笑

あまりにも我儘で身勝手な主人公。
すべての行動が無責任すぎます。
この先もずっと親の財産でニート生活をする、そういう男。
どんな女性とも、結局はうまくいかない、絶対。

しかしこんな最低男が主人公の映画をこれだけの名画に仕立てたのは
やはり音楽の美しさ、そして演出でしょう。
ロビンソン夫人の脚線美の向こうに見えるベンジャミン。
彼女のすべてのポーズが意味深。
エレーンの泣き顔も、男性なら誰でもこたえるような涙。

でもこの優柔不断な最低男をどうしても好きになれない。
ベンジャミンが大切なものは、そう、自分だけなのだから。



【解説】allcinemaより
大学を卒業し前途洋々のベンジャミン。彼は、祝賀パーティの席で誘惑をかけてきた中年女性ロビンソン夫人と逢瀬を重ねることに。だが彼女の娘エレインが現れた事で、その関係は崩れていく。親の勧めで不承不承エレインと付き合うことになるベンジャミンは、彼女に惹かれていったのだ。一方、そんな若い2人に嫉妬するロビンソン夫人。やがて、彼女とベンジャミンの関係がエレインの知るところとなるのだが……。ニューシネマ全盛の時代だからか、妙にリアルな肌触りを持った青春映画で、その生々しさはストーリーだけでなく、各キャラクターにも及んでいる。ホフマン、ロスの若い二人も好演だが、中でも、有閑マダムのロビンソン夫人に扮したA・バンクロフトの存在感は強烈。『サウンド・オブ・サイレンス』、『ミセス・ロビンソン』などサイモン&ガーファンクルの唄うメロディもいい雰囲気で、60年代後半に青春を過ごした人間にはバイブルのような作品でもある。