ジョン・バティステ:アメリカン・シンフォニー(2023)

アートは必要な人の所に 必要な時に訪れるだけだ」

原題はAmerican Symphony

【ジョン・バティステ】

1986年生まれのルイジアナ州出身のミュージシャン
ジャズバンドをやりながら、、クラシックのピアノレッスンも受け
ジュリアード音楽院修士課程でピアノの学士号と修士号を取得

それまでは一部のジャズファンからの人気があったものの

人気テレビ番組に出演したことでメジャーになり

2020年のディズニー映画「ソウルフル・ワールド」の共同作曲で注目を集め

2022年のグラミー賞では11部門でノミネートされ5部門で受賞

ラルフ・ローレン」や「バーニーズ」のアンバサダー

コーチの2020年秋冬コレクションのブランドアイコン

ファッション界でも注目されているアーティスト

【スレイカ・ジャワド】

ニューヨーク生まれ

チュニジア出身のイスラム教の父親と、スイス出身のカトリック教徒の母親とのハーフ

コントラバス奏者としてジュリアード音楽院を卒業した後

プリンストン大学に通い、近東研究とジェンダー研究で学士号を取得

2011年に22歳で骨髄性白血病と診断され骨髄移植

2012年からニューヨークタイムズ紙に掲載されたコラムはエミー賞を受賞

2020年にはベニントン大学で執筆と文学の修士号を所得

2021年に白血病が再発、2回目の骨髄移植を受けます

ふたりは10代の頃キャンプで知り合い、2014年から交際

2022年2月、極秘結婚していたことが明らかになります

グラミー賞受賞後、バティステが妻スレイカさんの闘病を支えながら

交響曲アメリカン・シンフォオニー」を作曲し

カーネギー・ホールで演奏するまでの夫婦の1年間を追ったドキュメンタリー

私がAPD聴覚情報処理障害)になったのが2019年ということもあって

バティステが「何者であるか」を知りませんでした

いわゆる天才と呼ばれる音楽家のひとりなのでしょうね

冒頭はインタビューによって、彼のドアップの顔が映し出され

セレブの自慢話とも思える輝かしいキャリアが語られます

しかし人気も売り上げも絶頂期と同時期に

10年前に骨髄移植した妻のスレイカさんの白血病が再発

やがてバティステのこれまでの人生が決して順風満帆だったわけでなく

マイノリティとしての苦労が浮かび上がってきます

彼が(子どもが使う)鍵盤ハーモニカで演奏したり

(どのように人々と音楽でつながることができるか探求するため)

路上や地下鉄の電車内でライブすることが

ジュリアード音楽院からも音楽批評家からも理解されない

精神病院に行けとまで言われたそうです

多民族的音楽を取り入れた交響曲

アメリカン・シンフォニー」製作に対する

クラシック界の冷ややかな反応も相当なもの

有名になればなるほどアンチも増える

(本番中の停電によるトラブルは関係者の仕業かと思った)

ファンの期待に応えようとするプレッシャーもあるのでしょう

舞台では陽気に振る舞っても、やはり腐心してしまう

眠れない夜もしばしば

でももっと辛いのはスレイカさんのほう

重圧になど負けていられないのです

製作総指揮にはオバマ前大統領夫妻も名を連ねていて

映画としてのエンタメ性は一切ないのですが(笑)

見せ場と言うのがこのふたりの「思慮深さ」なのでしょうね

痛みや、怒りや、苦しさを決して他人にぶつけない

困難な主題に、ただただ辛抱強く立ち向かっていく

スターの輝かしい表舞台ではなく、あくまで裏舞台へのアクセスなのです

結婚式は革ジャン、結婚指輪は緑のクラフトモール

何億円の指輪だって買えるのに(笑)

そんなものに価値がないことを知っている

そして地味な創作活動に大胆な構成、入念な練習とリハーサルを重ね

ついに交響曲アメリカン・シンフォニー」 が完成

カーネギーホールでのコンサートで

私たちは音楽の力で世界が変わってゆく瞬間を目撃します

「夜は必ず乗り越えられる」

暗いいばらの道を歩き続けてきたバティステの

未来を明るくしていこうとする思いが届いたのです


【解説】Filmarksより

2022年の初め、グラミー賞で計11部門のノミネーションを受け、最優秀アルバム賞を受賞したジョン・バティステはその年の最も有名なアーティストになったことを自覚します。その大成功の真っただ中、多楽器演奏家のジョンはこれまでで最も壮大な挑戦に没頭します。その挑戦とは、世界中に分散するさまざまな音楽をひとつにまとめ、シンフォニーの伝統形式を心躍るほどに再構築したオリジナルの交響曲アメリカン・シンフォオニー」を作曲して、かの有名なカーネギー・ホールで演奏すること。ところが、この類まれな道のりは、彼の人生の伴侶であるベストセラー作家スレイカ・ジャワードの体内で、長い間鳴りを潜めていたガンが再発したことが発覚し、頓挫してしまうことに...。「ジョン・バティステ: アメリカン・シンフォニー」は心の奥底に響く感動作。アカデミー賞ノミネートやエミー賞受賞歴を持つ監督マシュー・ハイネマン (「カルテル・ランド」「ニューヨーク 第1波」「米陸軍グリーンベレー 2021」) が、人生の岐路に立つ2人の比類なきアーティストの姿を、芸術と愛と、創作プロセスについての深い瞑想と共に映し出します