愛のコリーダ(1976)

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原題は「L'Empire des sens

センスとは感覚”五感”のこと、エンパイアとはの帝国・領域のこと

つまり「感覚の領域」とは性器のことを表していると思います

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大島渚監督によってフランス資本により製作

日本に逆輸入されセンセーショナルな風評を呼び話題になりました

仕掛人は名プロデユーサーのアナトール・ドーマン

なるほど、時々挿入されているグロテスクな描写にも納得

美しいものの裏にある醜悪なものの描き方が、この人は見事だ

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初見です、想像以上によかったですね

まず阿部定の描き方

 

決して美人でもなければ器量もよくない

だけど相手がどんな男でも受け入れることができるんですね(笑)

たとえ乞食で汚れたジジイ(殿山泰司)でもやさしく相手になってあげる

いつでも濡れている女

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でもそれより素晴らしかったのが吉蔵を演じた藤竜也さん

定のように吉蔵は有名でも知られてもいないけれど

吉蔵が憑依したのではないかと思うくらい

破滅へと向かっていく、何という退廃的な色気と美しさよ

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本作が女性に人気があるというのも頷けます

 

昭和10年、料亭の仲居として働き始めた定(松田瑛子)は
主人の吉蔵(藤竜也)に気に入られ、関係をもちます

定がいつでも濡れている女なら、吉蔵はいつでも起つ男

お互いひとめ見た時から、シンパシーを感じたのです

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それからふたりは四六時中、睦事(むつごと)を繰り返すようになり

仮の祝言(という芸者を呼んだ乱交パーティ)をあげ

部屋を借り暮らすようになります

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それでも吉蔵は朝にはおかみさんのもとにいったん戻り

おかみさんとも激しく交わります

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一方の定も先生(九重京司)と呼ぶパトロンがいてお金を無心しています

しかし先生のモノが役にたたないのでかわりに

「ひっぱたいて」もらったり「つねって」もらったのをきっかけに

定のサディズムが目覚めるのです

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それからというもの吉蔵の調教と、束縛がはじまる

はさみをや包丁を取り出し、あそこをちょん切るとか殺すとわめく

(ボーダー=境界性人格障害だな、たぶん)

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吉蔵も本物のドMなんですね(笑)

定がどんな脅しをかけても「いいよ」としか答えない

定が「やれ」と言ったことにすべて従う

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70歳近い芸者を襲って、ばあさんは失禁して失神

「なんだか 死んだ母親とやっているようだった」

って・・・ねえ(藤竜也さんよくやったよ 笑)

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挙句の果てには「首を絞めてやれば気持ちいい」と聞いたと

定に首を絞めるよう要求します

それはまだ見ぬ快楽のためか、それとも本当に殺されることを望んだのか

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鼠の死骸のような臭い部屋で、臭いふたりの

窒息プレイはエスカレートしていき、吉蔵は息絶える

定は吉蔵のペニスを切り取り、大切そうに胸に抱くのでした

やさしく微笑みながら

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他人には決して理解されない歪んだ性(さが)でも

真実の愛が、ふたりだけの世界が、そこにはあったのです

そして死が、吉蔵を永遠に定のものにするのです

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大島渚の天才ぶりを見せつける

美しき変態、究極の文芸的恋愛映画の傑作

 

ラスト・タンゴ・イン・パリ(1972)よりも

はるかにエロティックで、サディスティックで

ずっといい

ただしどちらも、万人にはおすすめできません(笑)

 

 

 

【解説】映画.COMより

昭和11年に起きた「阿部定事件」を題材に、大島渚監督が男女の愛の極致を描いた問題作。料亭「吉田屋」の住み込み女中となった定は、店の主人の吉蔵とひかれあい、情事を重ねる仲となる。やがてその関係が露呈したこと2人は駆け落ちし、さらなる愛欲の世界におぼれていくが……。性愛を題材にした作品が日本で十分に制作できるかという懸念から、フランスから輸入したフィルムで撮影を行い、撮影済みの生フィルムをフランスに直送して現像・編集するという方法で完成させた。日本公開版は修整が加えられたが、芸術か猥褻か表現の自由をめぐって論争が巻き起こり、後に出版されたシナリオ本をめぐっては裁判に発展するなど大きな注目を集めた。海外では1976年のカンヌ映画祭で上映され、芸術作品として高い評価を受けた。200012月には初公開時にカットされたフッテージをほぼ完全に復元したバージョンが「愛のコリーダ2000」として公開された。20214月にも「愛のコリーダ 修復版」としてリバイバル公開。