「ファラ・フォーセットはマイケル・ジャクソンと同じ日に死んだ
かわいそうだと思わないか?」
原題は「Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance) 」
(バードマンまたは(無知の予期せぬ美徳))
冒頭のシュールな空中浮遊が麻原彰晃にしか見えなくて(笑)
宗教まがいの超能力ものかと思いましたが、違いました
この映画が、面白いかどうかといえば微妙ですが(笑)
全編長回しによるほぼワンカットは、評判通り見事なもの
ハンドカメラの撮影にもかかわらず、まったく手振れなし
鏡のシーンにも映り込まない高度な技術
カメラはエマニュエル・ルベツキ
内容は、「バードマン」というスーパーヒーロもので成功を収め
今は落ち目の俳優リーガン(マイケル・キートン)が
アメリカの小説家レイモンド・カーヴァーが1981年に発表した
「愛について語る時に我々の語ること」を自らの脚色・演出・主演で
ブロードウェイの舞台に臨もうとするもの
負傷した俳優の代わりに「〇〇は出られるか?」とオファーを検討すれば
人気俳優は全員アメコミヒーローものの撮影中
「アベンジャーズ」に主演しているというのだ
どいつもこいつもマーベルかよディズニーかよ(笑)
メゾット演技で評価の高い人気俳優
マイク・シャイナー(エドワード・ノートン)を採用します
ところがマイクは舞台では本物のジンは飲むは
ベッドシーンではレスリーを強姦しようとするは
リーガンの演技やおもちゃのピストルにケチをつけるは
娘のサム(エマ・ストーン)まで口説く
おまけにニューヨークで最も影響力のある演劇評論家
タビサ・ディキンソンにコケにされ
最後のプレビュー公演中、喫煙しに外へ出たら閉め出され
ブリーフ姿でニューヨークの大通りを歩く羽目になり
その映像はYouTubeで100万回以上再生されたてしまう
リーガンは自分は超人で、舞台でも、演技でも
何でもできると思っているが、そうじゃない
そんなリーガンにとっての窮地にいつも現れるのが
かって自分が演じた「バードマン」
もういちど「バードマン」やれば客も来るよ~
儲かるよ~、人気復活だよ~
「アベンジャーズ」の仲間入りだよ~・・とは、言いませんでしたが(笑)
リーガンは既存のアメコミヒーローではなく
俳優として自分の才能が、演技が、芸術として認められたい
本物の映画や舞台を作りたいのです
でもうまくいかない
話題になるのは自分のパンツ姿か、マイクの勃起
酒を飲み、ラストシーンのために本物のピストルを手に取る
確かにピストルだけは本物だった
発砲と同時に血が飛び(弾は頭を剃れて鼻を破壊)リーガンは倒れ
観客はざわめき、やがてスタンディングオベーションを送ります
翌日の新聞でタビサは、舞台での事件を
「無知がもたらす予期せぬ奇跡」と評価しました(嫌味でだけどな)
映画業界への風刺を現わす下品で幻影的なイメージは
フェデリコ・フェリーニ作品のようでした
「鳥」の役に憑りつかれ病んでいくのは「ブラックスワン」(2010)風
死にたがりみたいな真似は、アメコミヒーローがよくやる
高いビルから街を見下ろしたり、飛び降りたりするパロディーでしょう
私がこの作品が多くの映画業界人に共感を得た理由は
いいかげんCGによる派手さだけで、中身はスカスカでワンパターン
スーパー・ヒーローものには飽きたし、うんざり
だけどアメコミを撮れば、客が入るし、金も入る、名前も売れる
(成功は制作会社も観客も無知だから→予期せぬ奇跡)
おれに、マーブルの監督のオファーは来ないだろうけど
この技術を見てくれよ
この演技を見てくれよ
超能力はこう使うんだぜ、リアルだろ
宙はこう舞うんだぜ、すごいだろ
だけどヒットしない(宣伝されない)
名前もメジャーにならない(長いからな)
そんなジレンマと、映画界におけるお金の問題や
薬物中毒や、セクハラ、SNSを使えない人間を化石のように扱い
スポンサーも、批評家も、ファンも恐れず
描ききったことだと思います
【解説】映画.COMより
「バベル」「21グラム」など、シリアスな人間ドラマで高い評価を得ているメキシコのアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督がダークファタジーに挑戦。第87回アカデミー賞では同年度最多タイの9部門でノミネートされ、作品賞、監督賞を含む4部門を受賞した。「バードマン」というヒーロー映画で一世を風靡した俳優が再起をかけてブロードウェイの舞台に挑む姿を、「バットマン」のマイケル・キートン主演で描いた。かつてスーパーヒーロー映画「バードマン」で世界的な人気を博しながらも、現在は失意の底にいる俳優リーガン・トムソンは、復活をかけたブロードウェイの舞台に挑むことに。レイモンド・カーバーの「愛について語るときに我々の語ること」を自ら脚色し、演出も主演も兼ねて一世一代の大舞台にのぞもうとした矢先、出演俳優が大怪我をして降板。代役に実力派俳優マイク・シャイナーを迎えるが、マイクの才能に脅かされたリーガンは、次第に精神的に追い詰められていく。