負け犬の美学(2017)

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「負ける人間がいるからこそ、勝つ人間がいる」

原題は「Sparring 」(スパーリング)

スパーリングとはヘッドギアなどの防具をつけて行う実戦形式練習のこと


主人公のスティーブは45歳で4913333のプロボクサー
アルバイトをしながら家族を養っています

でも私の解釈では、彼は「負け犬」じゃない

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理解のある、まあまあ美人の奥さんに

ピアノでパリへの留学を目指している、パパ大好きな娘オロール

まだ幼くて可愛い息子

ボクシングは彼のライフワークで

結婚生活では勝組だと思います(笑)

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とはいえ、オロールに練習用のピアノを買ってあげたい

留学の夢を叶えてあげたい

ティーブは元世界チャンピオン、タレク(ソレイマヌ・ムバイエ

復帰戦に向けてのスパークリングパートナーになることを申し出ます


スパーリングといっても相手が世界チャンピオン級ともなれば

場末のボクサーの公式の試合より、相当ギャラがいいのでしょう

当然その分リスクも高い

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しかも負け試合ばかりの45歳が

元世界チャンピオンの相手にならないことなど一目瞭然


それでもスパーリングのスカウトマンに直談判し

タレクに「もう来なくていい」とクビを宣告されても

年の功と経験で、お前にないものを知っている

俺を雇い続けろと説得します(笑)

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タレクにアドバイスするコーチの前では

「そういう戦い方は、相手も予測してくる」と

本来のスタイルで戦うべきだと口出ししてきます


普通なら「弱い奴が何を言っているんだ」 と

却下されてしまうでしょう

でもティーブには他人を納得させる説得力と

どこか人から好かれる魅力がありました

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でも初めて見に来た公開練習で、ボクシングファンの心無い野次に

オロールはひどく傷ついてしまう

でもそれは試合を盛り上げるためのファンサービスで

タレクが観客を煽ったためでした


タレクがスティーブの引退試合ためお膳立てしてくれた

世界戦の前座試合という晴れ舞台さえ

オロールは「もう見たくない」 と拒否してしまいます

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これがハリウッド映画なら試合の途中

娘が試合会場に向かって走り出し

最終ラウンドに「エドリアン~」ばりな

感動的なラストを迎えるはずですが


おフランスでは、本当に娘は見に来ません(笑)

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最後の試合を粘り強く戦い、帰ってきた父親に一言

「勝った?」だけ(笑)

まあ、実際年頃の娘は父親に対してこういうものでしょう


しかもチャンピオン復帰戦は一切描かないという

(ソレイマヌ・ムバイエ なのに!笑)

ラストはオロールのピアノの試験で終わります

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彼女にピアノの特別な才能があるかどうかはわからない

でもこの父親の子どもなら、たとえ試験に落ちたとしても

ピアニストへの夢を諦めることはないでしょう

 



【解説】映画.COMより

アメリ」でヒロインの相手役を演じたマチュー・カソビッツが、家族のために奮闘する落ち目のボクサーを熱演したフランス製ヒューマンドラマ。最盛期を過ぎた40代のプロボクサー、スティーブ。彼は愛する家族のため、そして自分自身の引き際のために、欧州チャンピオンの練習相手に立候補するが……。劇中のボクサー、エンバレク役には、WBA世界スーパーライト級王者のソレイマヌ・ムバイエを起用。監督はこれがデビュー作となるサミュエル・ジュイ2017年・第30東京国際映画祭コンペティション部門出品(映画祭上映時タイトル「スパーリング・パートナー」)