ミリオンダラー・ベイビー(2004)




「どんなときでも自分を守ること」


良かった・・

見始めてすぐに引き込まれました
そして感動しました。
感動した映画はレビューが長くなりそうで怖いですね。笑

暗い、落ち込むと評される方が多いようですが
私は全く違いました。
愛の映画だと思います。
夫婦や恋人でもない、親子でもない、友情でもない
だけど本物の愛、ただひとつの愛。

暗闇の中に現れたたったひとつの光。
最初はとても小さなものでしたがだんだんと明るくなり
やがて心を照らし暖かくするようになりました。
人生でかけがえのないものになったのです。

主役の3人を軸にそれ以外の人物の演出は最小限にとどめています。
余計なものを削いでしまうのは
見る人によっては不親切に感じるかもしれないけれど
この作品はこれでよかったと思います。

彼らにあるのはボクシングだけ
ボクシングしか知らないのです。

止血係として多くの世界チャンピオン級ボクサーとかかわってきた
今は老トレーナーでジムのオーナーでもあるフランキー。
彼の育てた選手の前座試合に出場していた女性ボクサー、マギー。
彼女はフランキーに自分のトレーナーになってくれと懇願します。
そしてフランキーのジムに通い続けます。

31歳、女性としてもボクサーになるにしても
決して若くないマギー。
だけれどボクシングに対する情熱だけは
誰にも負けないものをもっていました。

ジムで働く元プロボクサーのスクラップは
そんな彼女を気にかけます。

スクラップはやさしい男なのでしょう。
ボクシングに愛情を持っている者を
ボクシングへの一生懸命を
放っておけないのです。

出来ないのも、弱いのも、何が悪いのでしょう。
「負けてもいいんだ」
ボクシングが好きならボクシングをやっていいのです。

マギーは懸命にボクシングに打ち込みました。
やがて頭角が現れます、彼女は天才でした。
頑固だけれど素直で無垢で努力家。
真っ直ぐなマギーにフランキーもスクラップも
そして私も徐々に惹かれていく。
試合に勝ち続けていくマギー。
栄光と勝利。

だけれどスポーツは怪我や
場合によっては死に至ることがあることは誰でも知っています。
マギーも試合中の相手の反則により不随となってしまいます。
どうしても助けたい・・フランキーの願い。
だけれどマギーの気持ちは違います。

もう充分に素晴らしい経験をしたと語ります。
フランキーの助言を守れなかった
自分が悪かっただけなんだと。

でももうボクシングはできない、ボクシングがなければ空っぽ。
大好きなフランキーにもスクラップにも心配させ迷惑をかけている
そんな苦しさ。

楽になりたい
自由になりたい・・

本当に愛する人の切実な思いを
人は叶えてあげれるのでしょうか?

でも本当に愛しているなら
叶えてあげたいと思うでしょう。
たとえそれが大罪でも。
自分はどうなってもいいのです。

マギーもフランキーもスクラップも
はたして不幸だったのでしょうか?

私は違うと思います。

お気に入りで。



【解説】allcinemaより
許されざる者」「ミスティック・リバー」のクリント・イーストウッドが監督・主演を務めた衝撃のヒューマン・ドラマ。厳しいボクシングの世界を題材に、そこに生きる名もなき男女の悲愴な人生模様を綴る。アカデミー賞で作品賞をはじめ主演女優、助演男優、監督賞の計4部門を受賞。共演は、ともに本作でオスカーを獲得した「ボーイズ・ドント・クライ」のヒラリー・スワンクと「ショーシャンクの空に」のモーガン・フリーマン
 ロサンジェルスダウンタウンにある小さなボクシング・ジムを営む老トレーナー、フランキー。その指導力に疑いのない彼だったが、選手を大切に育てるあまり、成功を急ぐ優秀なボクサーは彼のもとを去ってしまう。そんなある日、31歳になる女性マギーがジムの門を叩き、フランキーに弟子入りを志願する。13歳の時からウェイトレスで生計を立てるなど不遇の人生を送ってきた彼女は、唯一誇れるボクシングの才能に最後の望みを託したのだった。ところが、そんなマギーの必死な思いにも、頑固なフランキーは、“女性ボクサーは取らない”のひと言ですげなく追い返してしまう。それでも諦めずジムに通い、ひとり黙々と練習を続けるマギー。フランキーの唯一の親友スクラップはそんなマギーの素質と根性を見抜き、目をかける。やがてマギーの執念が勝ち、フランキーはついにトレーナーを引き受けるのだが…。