フィラデルフィア(1993)



2016年末時点で世界のHIV感染者数は3670万と推定
エイズの流行が始まって以来およそ7610万人がHIVに感染し
3500万人がエイズ関連の疾病で死亡したと考えられる

日本国内HIV感染発生数は厚生労働省エイズ発生動向委員会に報告され
2016年の新規報告数は1448
日本人国籍男性の同性間性的接触による感染が約6
調査を開始してからの累計(凝固因子製剤による感染例を除く)は2.7万件超
またHIV感染に気づいていない感染者5800いるとみられている

厚生労働省エイズ動向委員会による「平成28(2016)年エイズ発生動向」より





数字から見たら今やAIDSは珍しい病気でもなんでもなく
がん患者に触れてもがんが移らないのと同じで
AIDS患者に触れてもAIDSにならないことはあたりまえの常識

AIDSLBGTへの偏見や差別も

かなり減少しているのではないかと思います


でも実際にはAIDSLBGTであっても

職場に隠している人がほとんどなのではないでしょうか




フィラデルフィアで一流法律会社に務める
アンドリュー(トム・ハンクス)も

同性愛者でAIDSであることを隠していました

仲間から信頼され、重要な仕事を任されていたにもかかわらず

カポジ肉腫ができたことで病気が事務所にばれ

社長(ジェイソン・ロバーズ)によって解雇されてしまうのです


不当な差別に訴訟を決意するも

次々と弁護を断わられてしまうアンドリュー



ある日図書館で不当な扱いを受けいるアンドリューを見かけた

ジョー・ミラー弁護士(デンゼル・ワシントン)は

彼の弁護を引き受ける決意をします

対する会社側の主任弁護士はベリンダ(メアリー・スティーンバージェン

裁判はアメリカ中から注目されることになるのです


当時はまだAIDSがゲイ特有の病気だと思われ

AIDS患者を擁護するだけで同性愛者だと勘違いされてしまう

同性愛者と異性愛者の友情が

特に同性同士だと難しいものだということがわかります




自らもAIDSへの偏見、ゲイへの嫌悪を持ちながら

弁護士として「差別は悪」だけど「AIDS同性愛)は悪ではない」

という正義の実践に揺れるミラー弁護士


だんだんと痩せていくAIDSの病状を表現した

トム・ハンクスが見事でオスカーを手にしましたが


当時はまだ、原因不明の「死の病」という恐怖と

ゲイと麻薬の常習者に感染者が多かった中で

AIDS患者に偏見を持たないよう努力する

デンゼル・ワシントンのほうが難しい役だったと思います



ただAIDS患者の家族やパートナーがそれを知った時には
もしかしたら本人以上のショックがあると思うのですが
そこはあまりに理解があって出来過ぎに思えました

せめてパートナー(アントニオ・バンデラス)は
自分と付き合っている最中に
不特定の相手との行為で感染したかもしれないと知った時には
もう少し動揺を見せてもよかった



私なら夫が、万が一そういう店でAIDSになったと知ったら
病気で死ぬ前に殺してやりたいと思います
思うだけで、最後まで介護はしますけれど


もしかしたら、身近な人がAIDSに感染しているかも知れない
それくらい今はAIDSは身近な病気になりつつあります
そのとき私たちはミラー弁護士のように
偏見より正義の心が打ち勝つことができるのか



これももう、もう25年以上前の作品なのですが
今でも、AIDSという題材について考えるのには
良い作品だと考えます




【解説】allcinemaより

 可能な限り誠実に仕上げた作品であるといえる。主演のハンクスが背負わされた役割は多いから、時に過剰に見えるところもあろうが、げっそりと痩せてみせた熱演は、アカデミー主演男優賞の名に恥じないものであろう。なによりも感動的なのは、エイズで死にゆく彼の、不当解雇の法廷闘争を支える人々の描写だ。彼らをごくあっさりと、しかし力強く捉えた描写によって、この作品の現実性は増し、題名の街の名がそもそも意味する“友愛”を信じさせる。俗っぽい黒人専門の弁護士に扮する、もう一方の主役ワシントンもよいが、出番は少ないなりに存在感のある助演陣、ことに主人公の母役のJ・ウッドワードは、監督デミの言うとおり、ただ佇んでいるだけで素晴らしい。主人公がヘッドホンでマリア・カラスのアリアを聴くシーンは、音楽の美しさもあって、胸揺さぶられる場面である。B・スプリングスティーンの主題歌もオスカーを受賞。