ブルゴーニュで会いましょう(2015)



原題はPREMIERSCRUS」(プルミエ・クリュ1級畑)


フランス東部アロース・コルトンは人口200人に満たない小さな村で
優れたワインを産する歴史のあるドメーヌも多く
ブルゴーニュでは珍しい、赤・白両方の特級畑を持つそうです


しかし、農家の後継者不足により転売されるケースも多く

パリでワイン評論家として活躍するシャルリの実家も

多額の借金と在庫により「会社更生法」に陥り

1年以内に再建できなければドメーヌを売るしかありません


買い手として手を挙げたのは、日本の企業と

隣に住むワイン醸造家、エディットでした




シャルリは父親であるフランソワの破産寸前の畑を引き継ぎ

新しい試みと、手探り状態で中世の製法に挑もうとします


とはいえ、ワイン造りには選別、発酵、プレス、成熟、ろ過・・

そしてボトリングという長い作業が待っているのです

しかも失敗したら、自分のワイン評論家としての地位も失ってしまう



離婚がきっかけで、散漫な経営と自分の趣味に入れ込み

ワイナリーを破産させかけた父親だったけれど

シャルリの熱意に少しづつだけど妥協していきます

農家とは家族経営、家族の支えがなくては成り立たないのです


「いつ収穫すべきか」という重要なタイミングでは

ブランシュ(エディットの娘)から

「皮をかんで、種をかんで、リコリスの味が残ったら収穫の時期」

という、貴重な情報を教えられます




シャルリとブランシュは出版記念パーティーで心惹かれあい、一度は寝た仲

だけどシャルリは翌朝早く部屋から逃げ出すような男でした

ブランシュはアメリカ人実業家と結婚してしまいます


そしてシャルリの父親とブランシュの母親もかっては惹かれあいながら

お互い違う相手と結婚したという過去がありました

そのことに後悔はない


だけど子どもには同じ失敗はさせたくない

もちろん祖先から育て上げたぶどう畑を

外国人に渡したくないという気持ちもあるでしょう

自分たちの国の伝統は自分たちで守りたいという願い




ただ、ボージョレ・ヌーヴォーのように収穫してから
数か月で飲むワインならともかく
飲み頃まで数年から数十年かかるものまであるはずで

一年目でワイン造りに成功するというのは、ちょっと嘘くさいし


見はじめてすぐ、結末が読めてしまうベタな展開

結末も安易にハッピーエンドではありましたが(笑)




ブルゴーニュの黄色く一面染まったぶどう畑の素晴らしい風景

日差しが差し込む朝の気配の中、水蒸気の上がる大地

太陽の恵み、流れる風に揺れる葉、大粒の雨、雪の冬

厳しい自然のなかで育まれた、愛おしい果実は

ため息のでるような美しさ


この感動は農業を営む者にとって

飽きることなく毎年呼び起こされる

決して失ってはいけない人間の魂




そしてフランスだけでなく、日本にも同じように失われつつある

美しい田園風景がいくつもあるということを

忘れてはいけないのでしょう




【解説】allcinemaより

 葡萄畑で有名なブルゴーニュ地方を舞台に、傾きかけたワイナリーの再建を通して、バラバラだった家族が再生していく姿を見つめたドラマ。主演は「そして友よ、静かに死ね」のジェラール・ランヴァンと「イヴ・サンローラン」など監督としても活躍するジャリル・レスペール。監督は、これが長編2作目のジェローム・ル・メール。
 父親と衝突して家を飛び出し、パリでワイン評論家として成功を収めたシャルリ。ある日、妹から故郷ブルゴーニュにある実家のワイナリーが経営不振で買収寸前との知らせが入る。久々に父と再会するも、わだかまりはなかなか消えない。それでも家族の思い出が詰まったワイナリーを手放すべきではないと、自らの手で再建することを決意する。しかしテイスティング能力は一流でも、ワイン造りは全くの素人。妹夫婦や幼なじみのブランシュに助けられ、自然農法で昔ながらのやり方にチャレンジしていくシャルリだったが…