パーマネント・バケーション(1980)

 
大学の卒業制作作品であるにもかかわらず
注目され劇場公開されたという本作
 
ニューヨーク州立大学で講師をしていた
ラブレターか挑戦状
 
意味はないけれど、まだ若く背伸びしている感じが新鮮でした
ただ淡々と「一か所に留まることができない」
そんな陰気で変わりものの少年の姿を描いています
 
 
16歳の陰気な少年アーリーは
リーラという女の子と同棲しているようです
 
突然、音楽をかけて踊り出す
突然、本を読みだす
(「ロートレアモン伯爵のマルドロールの歌」という本らしい)
そして突然、精神病院にいる母親のお見舞いに行くという
 
 


でもその前に、生まれた家を訪ねる言います
その家は戦争中に中国人に爆撃された、そんな意味不明な説明をして
廃墟に着いたアーリーは、出会った軍人に「逃げたほうがいい」と助言するのです
 
それから病院、映画館、夜の街を彷徨い
翌朝には女性の車を盗んで、売って、アパートに戻ります
そこにリーラの姿はなく
パスポートを握りしめ、波止場に行くアーリー
そこからパリ行きの船に乗って、ジ・エンド
 
 
 
「映画を作りたいのなら、そのことを人に話すな ただ作ればいいんだ」
と教えたそうです
 
この作品はそんな師の教えに、忠実に作られたような気がしました
 
 
今まで私が見たジャームッシュの作品同様
「漂流者」という自分のスタイルを
(私の決めつけた勝手なスタイルですが 笑)
大学時代から、しっかりと持っていたことには感心しました
 
そしてジム・ヴェンダースの「ことの次第」(1982)の
フィルム・ストックを譲り受け、次作を作りはじめます
それもまた、ストレンジャーの物語でした
 
 
決して傑作といえる出来ではありませんが
このジャームッシュの若き処女作には
ムービーファンなら、どこか愛着の湧く1作でしょうし
 
これから映画監督を目指そうとしている若者にとっては
自分は他人とは違う、いかにオリジナルなスタイルを発見できるかという
目標となる作品ではないかと思います
 

 
【解説】allcinemaより
ジャームッシュが大学在学中に作った長篇デビュー作で、以後の作品でもおなじみの音楽家ルーリーも顔を出すが、確たるストーリーもないアマチュア映画そのもので、かえって、奇をてらわぬナマの感受性が新鮮に映った。落ちこぼれ気味の16歳の高校生アリーが、自分の周囲にも様々なアウトサイダーのいることに気付き、その出会いがおのずと、旅へ向かう自己の指針を決めていく。パンクっぽく装うと見せて、意外にリリカル。その辺りがジャームッシュの魅力なのか(逆だといいんだけど)…。