サンセット大通り(1950)




「奥様、アイシャドウの濃さが左右で若干違います」


1989年に創立された「アメリカ国立フィルム」選定リストの
第1回(25本)登録作品に選ばれた正真正銘の傑作映画であり
ワイルダーの代表作

確かに凄い物語でした
ホラーに近いといってもいい


ローンが支払えず、自動車会社の男に追いかけられたジョー(ホ-ルデン)は
サンセット大通りにある荒れ果てた邸宅に逃げ込みます
そこに住んでいたのはサイレント映画時代の大女優
ノーマ・デズモンド(グロリア・スワンソン)と
執事マックス(エーリッヒ・フォン・シュトロハイム)でした

そしてジョーはノーマから、彼女が書いた映画の脚本を
手直ししてほしいと頼まれるのです
やがてノーマの愛人になりますが
ノーマの束縛に耐えられず、夜中に屋敷から抜け出しては
映画会社の脚本部員であるベティと脚本の共作をするようになるのです





決して女優としての威厳を失ってはいないノーマ
化粧や装飾品で飾り立て、目を見開き、顎を上げて振る舞う
映画に出演するためには努力も怠らない
レーニングをし、皺を取るためのあらゆる美容法
しかしその誇り高さはあまりにも虚しく、滑稽です

グロリア・スワンソンの経歴を調べると
ノーマ・デズモンドそのものではないかと思います
セシル・B・デミルやバスター・キートンも出演し
とてもリアルな設定になっていますね





50歳を演じたスワンソンは撮影当時53歳だったということ
撮影現場は和気あいあいとし、楽しいものだったそうです

イーディス・ヘッドの衣装も相変わらず素晴らしく
時代遅れと威厳をブレンドさせた、サイレントの「女王」にふさわしい
渾身の仕事を見せています


長い年月を経てようやくノーマにスポットライトが当たるエピローグ
形は不本意だけれど、カメラの前に立つという彼女の願いを
執事のマックスは再び「監督」に戻り、叶えてあげるのです
マックスの愛こそが、永遠の真実の愛
カメラで捉えられた彼女のクローズアップはどんどんぼやけて見えなくなる
残酷さが胸に突き刺さるラスト


スワンソンはこの作品のおかげで映画史に残る女優となり
モンゴメリー・クリフトの降板で、偶然この役を得たホ-ルデンは
B級俳優から大物俳優へのステップを踏んだということです

特に印象深かったのは執事役のエリッヒ・フォン・シュトロハイム
サイレント映画の三大巨匠」と呼ばれる有名監督とは知りませんでした
完全主義者でも有名ということで、完璧な執事役にもぴったり
素晴らしい演技を見せてくれました





とにかく、ひとことで言えば圧倒されてしまう作品
サイレント時代の俳優たちの、盛期を終えてもなお残る
強靭なパワーを感じることができるでしょう



【解説】allcinemaより 
ある日、借金取りに追われていた売れない脚本家のジョーは、サンセット大通りに建つ一軒の寂れた邸宅に逃げ込む。そこは、サイレント映画時代の伝説的女優ノーマ・デズモンドの住まいだった。そして、かつての栄光を取り戻すべく銀幕への復帰を目指す彼女は、ジョーに主演作品の脚本を住み込みで執筆させることに。寝食にありつけるとあってこの依頼を引き受けたジョー。しかし、仕事はおろか私生活まで束縛され、ノーマへの不満が募っていく。やがて、ノーマが未だ復帰の機会を得られない中、同じ脚本畑のベティに癒しを求めていくジョーだったが…。
 豪邸で隠遁生活を送るサイレント映画時代の伝説的女優と、彼女が自身のために書いたシナリオの修正をまかされた売れない脚本家。ジゴロ気取りで邸宅での日々を過ごしていた脚本家が、仕事だけでなく私生活すら束縛される事に怒りを感じ始めた時、物語は悲劇を迎える。過去の栄光だけを糧として生きる忘れられたスター、ノーマ・デスモンドや彼女の召使、脚本家と恋に落ちる女性などの人物設定を始めとして、オスカーに輝いた脚本の構成は素晴らしく、ハリウッドの光と影をB・ワイルダーが見事に活写した傑作。ノーマに扮したG・スワンソンのラスト・シーンに向けて次第にテンションの上がって行く鬼気迫る芝居も凄い。