人間の証明(1977)

 

 
 
松田優作さんが出演してアメリカで撮影もいるせいでしょうか。
リドリー・スコット監督の「ブラック・レイン」を思い出しました。
 
70年代はまだ敗戦の傷跡が色濃く人々の心の中に残っていたのですね。
敗戦直後、女性はアメリカ兵に集団でレイプされ
男性は暴行され殺される。
戦争孤児は乞食の生活。
 
しかしアメリカ人にとっても、日本人は真珠湾を攻撃した悪者。
日本兵の攻撃で家族を失った憎しみは大きい。
 
アメリカ人の黒人青年(ジョー山中)が東京ロイヤルホテルで
デザイナー八杉恭子(岡田茉莉子)ファッションショーのさなかに殺されます。
日本の警察の棟居(ムネスエ)刑事(松田優作)と
ニューヨーク市警のシュフタン刑事(ジョージ・ケネディ)。
まだお互い戦争の憎しみの消えていないふたつの国の刑事が
その殺人事件を共同で捜査をすることになります。
 
あらすじだけを見れば、結構面白そうな匂いがするのですが
ミステリーとしては正直駄作でした。
 
「キスミー」「西條八十詩集」「ストーハ」
点が線になり、線が立体となり姿を現す・・
私的にはそういう謎解きは結構好みの展開なのですが
これが超がつくほど強引な辻褄合わせで。笑
あまりにも都合のいい偶然が重なりすぎしょう。
 
ラストの演説では殺人をカミングアウトしたのに
なぜか観客は拍手喝采するのです。
これもありえないでしょう。
 
ストリーは綻びだらけながらも、キャストは豪華でした。
特に居酒屋にやって来た、大滝秀治爺と蛾次郎さんの異色のコンビが最高。
突然「お母さん、僕のあの帽子...」と語り出してネタバレするのには
笑ってしまいます。
 
70年代の雰囲気と、オールスターキャストを楽しむ作品でしょう。
 

 
【解説】allcinemaより
犬神家の一族」に次ぐ角川春樹事務所製作第二弾作品。日本とアメリカを舞台に、戦後30年という歳月に刻まれたさまざまな人間の生きざまを描くサスペンス・ドラマ。東京の高級ホテルのエレベーターで黒人男性が“ストーハ”という言葉と、西条八十の詩集を残して殺された。捜査線上に見え隠れするファッションデザイナー八杉恭子とその息子。黒人男性の過去を追って渡米する棟寄刑事。八杉と黒人男性の意外な関係、そしてアメリカの刑事と棟寄刑事の関係が明らかになる……。公開当時、ジョー山中の歌う主題歌と、“母さん、僕のあの帽子どうしたでしょうね?”という西条八十の詩の一節がCMで強い印象を残し一世を風靡した。