あなたになら言える秘密のこと(2005)


 
 
「人は過去をどう背負えばいい?悲しい結末を・・・死をどう受け入れる?」
「さあ・・皆、未来に向かってどうにか生きてる。でも挫折する人もいるわ」
 
こういう静かで、渇いた空気感の作品は好きです。
大洋上に忽然と浮かぶ採油施設など、風景もとても美しい。
しかし、心がとても重くなる物語でした。
 
耳に補聴器、食べるのはコメと鶏肉とりんごだけ、毎日取り替える石鹸
殺風景な部屋・・
ハンナ(サラ・ポーリー)はきっと心に深い傷を抱えているのだろう・・
誰もがそう思います。
 
会社命令で1ヶ月もの休暇を取らされた彼女は
看護師として、海上掘削場の爆発で火傷をした患者の手当てを
することになります。
大火傷を負い一時的に失明したジョゼフ(ティム・ロビンス)は
その爆発で親友を失いました。
彼には死んだ親友の妻と不倫をし、そのことを打ち明けてしまった
過去がありました。
 
掘削場で働く男性は皆孤独で、孤独なハンナにやさしく接しました。
偏見のない程よい距離間は、彼女に食事の楽しさを甦らせ
笑顔をとり戻させます。
そしてジョゼフが掘削場からヘリで病院に運ばれる直前
ハンナは彼に自分の過去を打ち明けます。
 
レイプ、拷問、娘を殺した話・・
 
・・・クロアチア難民。
 
国連兵がやって来たとき、監禁から開放されると思った。
しかし国連兵もクロアチア兵と同じだった・・・
 
「私の涙であなたは溺れてしまう」
「泳げるようになるよ」
 
ジョゼフの気持ちは、愛なのか、同情なのか、憐れみなのか。
ただ、ハンナを守りたいという思いは本物なのでしょう。
その大きな身体ですっぽりと彼女を包み込むシーンには感涙。
 
あまりに辛く、オススメな作品とはいえません。
しかし、個人的にはお気に入りで。
 

 
【解説】allcinemaより
 「死ぬまでにしたい10のこと」のイザベル・コイシェ監督が再びサラ・ポーリーを主演に迎えて描く一人の女性の痛みと再生の物語。海洋に浮かぶ油田掘削所を舞台に、心に深い傷を負い夢や希望も持たず静かに生きる孤独な女性が、事故で一時的に視力を失った男性の介護を通じて少しずつ固く閉ざした心を開いていく姿を美しく静謐な映像で綴ってゆく。共演は「ミスティック・リバー」のティム・ロビンス
 過去の苦難の記憶を胸に秘め、誰とも言葉を交わすことなくひたすら孤独な毎日を送る若い女性、ハンナ。工場でも黙々と仕事をこなす彼女だったが、ある日、働き過ぎが問題となり、無理やり1ヵ月の休暇を取らされてしまう。宛てもなく長距離バスに乗り込んだ彼女は、ひょんなことから海の真ん中に浮かぶ油田掘削所でジョゼフという男性の看護をして過ごすことに。彼は事故でひどい火傷を負い、一時的に視力を失っていた。それでもユーモアを失わないジョゼフは彼女に名前や出身地を質問するが、ハンナは決して答えようとしない。この油田掘削所で働いている男たちは、それぞれに事情を抱えた者たちばかり。閉ざされた空間でそんな風変わりな男たちと生活を共にするうち、ハンナも少しずつ人間らしい感情を取り戻していくが…。