チャップリンの殺人狂時代(1947)

 
 
妻子を養うために、裕福な女性と重婚し、金を得るために殺害するヴェルドゥ(チャーリー)。
しかし宝くじにあたった悪運の強いオバチャンだけは思うとおりに殺せません。
他のマダムと結婚しようとしたら、その結婚式にまで現れます。
この作品では、この不死身のオバチャンとチャーリーのやりとりが
面白かったですね。
札束を数えるシーンなど、セリフのないコミカルな動きはやはり魅せますし
健在でした。
 
「歴史的に殺しは一大ビジネス。戦争も紛争も全てビジネスです
ひとりを殺せば悪党、100万人を殺せば英雄、数が罪を正当化する」
 
これは、映画史に残る有名なセリフですよね。
どうして人を殺してはいけないの?
私ももしかしたら子ども時代にそんな質問を親にしたかもしれません。
ラストでチャーリーも、そう問いかけます。
なぜ殺人はいけないのでしょう。
戦争ではあんなに人が死んでいるのに。
 
しかし「独裁者」のラストほど言霊を感じないのはなぜか。
言葉が活かされていなかったような気がしました。
たぶん戦争映画でないのに
ラストに戦争の話題をもってきてしまったからでしょうね。
失業、銀行が倒産、株が暴落・・
恐慌による身の転落の話だったのに、違和感ありすぎです。笑
でも、それほど反戦を訴えたかったのかも知れません。
 

 
【解説】allcinemaより
35年間まじめな銀行員だったアンリ・ヴェルドゥは不況のあおりで失業、足の悪い妻と幼い息子を抱えて新しい職を捜さなければならなかった。一方ヴェール家では、3ヵ月程前にヴァーネイなる男と結婚したまま消息を絶ったテルマの身を案じて警察に届けていた。奇妙な事に彼女はパリの銀行から預金を全額おろしていた。すでにフランス各地で婦人の失踪事件が12件も発生している事実を重視した警察は、誘拐殺人事件とみて捜査を開始するが……。チャップリンが第二次大戦後の1947年に発表した、現代版“青ひげ”一代記。6人もの妻を殺したというフランスの伝説的人物よろしく、虫も殺さぬやさしい紳士が実は希代の背徳漢で、金持ちの未亡人と結婚しては殺害して遺産をせしめてゆく--。オーソン・ウェルズの原案をチャップリンがシナリオに構成、2年を費やして完成させた。人間に対するシニカルな考察を持って、笑いと紙一重の恐怖を描いた、天才映画作家チャップリンの傑作。ラストシーン、逮捕された主人公ヴェルドゥが“一つの殺人は悪漢を生み、100万の殺人は英雄を生む”というセリフは、戦争という大量殺人行為に対する痛烈な警句であり、観る者の胸を締めつける名セリフである。