キッド(1921)

 
 
 
 
チャップリンが初めて作った長編映画
そして、初めて映画で子役が億万長者になったことでも有名な作品。
 
なんといっても子どもがかわいいですよね。
チャーリーをしのぐほどの、その動きに演技力。
ヤカンでミルクを飲む赤ちゃんでさえ、お見事な演技。笑
 
偶然に拾ってしまった捨て子。
最初は全く育てる気などなかったのに、いつの間にか5歳くらいまで成長します。
一緒に仕事?をしては警察から逃げたり
寝るのも食事をするのも、とにかくふたりはいつも一緒。
父と子の愛を確かめ合うキス・・キス。
着の身着のままの貧しい生活でも、その姿は実にほほえましい。
そして施設に連れ去られ、離れ離れになるときの涙。
 
言葉なく、表情と動きだけでこれだけ感情を表すって凄いですよね。
もちろん、内容もしっかり理解できます。
 
チャーリーの映画は、どの作品でも食事のシーンが良いですよね。
日々の食事に感謝する・・という気持ちがとても伝わってきます。
「キッド」でも、一枚余ったパンケーキをはんぶんこにして
きちんと均等に分けます、大人子ども関係なく。
愛と食べ物の大切さを感じます。
 
最後はハッピーエンド。
でも、ラストは少しあっけなかったかな?笑
 

 
【解説】 淀川長治 評
・・・前略
 
映画はもうメロドラマいかにも美しいメロドラマ。で、チャップリンエドナ・パーヴィアンス、その代表作品ですね。で、『キッド』をご覧になったら映画のコメディは、本当は悲しい中に笑いがある。それでこの笑いがいかにもいかにも悲しいこのストーリーの中に笑いがあると言う所に笑いが活きてくるだと言う事を言ってます。

で、この『キッド』観てますとこの子供が見事なんだね。硝子屋になって2人が一緒に出かけて行くんですね。チャップリンが硝子屋ですね。で、子供が先に行ってパーンパーンと硝子割って行く。その後からチャップリンが「えー硝子屋でこざい、硝子屋でござい。」と言って2人で商売するんだけど、チャップリンは昔、貧乏で貧乏で困った時にやっと兄さんが帰って来た、家出した兄さんがシドニーチャップリン。で、二人で7つか8つぐらいの2人で硝子屋に奉公したんですね。まず硝子屋で奉公してそれから金貯めてカルノー一座に入ったんですね。その硝子屋に入ってた、その硝子の経験を『キッド』で活かしてるんですね。
 
で、この『キッド』で面白い事はこの時にチャップリンは、ミルドレッド・ハリスと言うエキストラ、その綺麗な女優に一目惚れして夢中になったんですね。夢中になってそうして結婚したんですね。『キッド』の時に結婚したんですけど、この16才の女のミルドレッド・ハリスは毎日毎日一緒にどっか遊びに行く。毎日毎日オペラ見に行く。毎晩毎晩何か豪華なパーティーに行く、それを楽しんで楽しんで来たのにチャップリンは撮影していると1日も2日も3日も帰って来ない、もうカンカンに怒ってチャップリンとは別れる、別れるって言ったら、お母さんが「チャップリンと別れなさい。その代わりチャップリンの持っている物全部取りなさい」と言ったんですね。お母さんに言われてこのミルドレッド・ハリスは狙ったのは『キッド』のもう90%出来ているフイルムでしたね。「あれ、持って逃げろ、あれ持って逃げろ。それであれを3つに分けて短編にして売ろう」と言いました。そうしてチャップリンの『キッド』を狙ったんですね。それを高野さんが感付いたんですね。危ない危ない!言うんでチャップリン呼んでその『キッド』のフイルムを持ってテ―っと逃げたんですね。そうして砂漠地帯に逃げて砂漠の一軒屋行って、一軒屋の中で『キッド』を編集したんですね。ミルドレッド・ハリスがそれを取ろうとしたんですね。そういう様な影の話がありますが『キッド』は見事なチャップリンの運命的な作品ですね。