ビール・ストリートの恋人たち(2018)



「人間の違いは、生まれてくる母親が違うだけ」

原作は黒人作家のジェームズ・ボールドウィン(1924~1987)
IfBeale Street Could Talk」(ビール・ストリートに口あらば)
死後も文学界に大きな影響を与え、存命なら間違いなくノーベル賞
候補になっていたと言われているそうです

今でも「時代を超えて心打つ」と評され映画化にふさわしい作品



しかしながら映画のほうは
(製作総指揮がブラット・ピットなのが関係あるのか、ないのか)
私の心のピンポイントを突いてくるものではありませんでした

「ムーンライト」(2016)もですが
バリー・ジェンキンス監督の描く純愛は
私には純潔すぎるのかもしれません




1970年代のニューヨーク、19歳のティッシュ(キキ・レイン)と
22歳のファニー(ステファン・ジェームズ)は
幼い頃から硬い絆で結ばれ、愛し合うようになっていました
結婚前に、ふたりで暮らす部屋を探しています

ある日、ファニーはちょっとした理由から白人警官に目をつけられてしまい
レイプ犯の罪を擦り付けられ、刑務所に入れられてしまいます
そんな時ティッシュの妊娠が発覚



ティッシュとその家族はファニーを助けようと奔走します
よくある展開ならば、その後は差別に打ち勝ち裁判に勝訴・・
になるはずですが

主人公の無実を最後まで証明できません

被害者女性生涯のほうも、自分たちと同じ境遇で蔑ろにされた
無実の人間を、犯罪者ににすることで
自分の受けた忘れたいのか





特筆すべきはやはり母親役を演じたレジーナ・キング

狂信的で、ティッシュを侮辱し呪いのような言葉を浴びせる
ファニーの母親に対して「生まれてくる子どもは、あなたの孫なのよ」
という冷静な態度



無実の婿を救うため、単身プエルトリコへ乗り込み
被害者女性と会い、失敗したと嘆くリアクションも見事
母親の愛情のスケールの大きさと
いつまでも失わない女性らしさを感じます

そして、それにも劣らない存在感があるのが、もうひとり
チョイ役で登場した白人警官
イヤらしいですねえ、あんな顔は見るだけで虫唾が走ります



エンドロールに流れるのは、アメリカ愛国歌MyCountry, 'Tis of Thee

”自由の大地、自由よ響け”という、現実と違う虚しさ

ハッピーエンドでもないし、カタルシスもない
でもどんなに絶望的でも揺ぎ無い愛はありました

衣装はお洒落(笑)
働く女性の参考にもなると思います



ただやはり私の心のピンポイントを突いてこないのは
(製作総指揮がブラット・ピットが関係あるのか、ないのか)
人種差別やLGBTを描いた作品が、アカデミー賞など賞レースのための
流行に乗っているようにしか、感じないからかもしれません



【解説】シネマトゥデイより
第89回アカデミー賞作品賞受賞作『ムーンライト』などのバリー・ジェンキンス監督ジェイムズ・ボールドウィンの小説を映画化。『ムーンライト』でも組んだブラッド・ピットが製作総指揮に名を連ね、1970年代ニューヨークのハーレムで生活しているカップルの物語が描かれる。オーディションで選ばれたキキ・レインと、『栄光のランナー/1936ベルリン』などのステファン・ジェームズがカップルを演じる。
1970年代のニューヨーク。19歳のティッシュ(キキ・レイン)は、小さいころから一緒に育ってきたファニー(ステファン・ジェームズ)と愛し合い、彼との子供を妊娠する。幸せな毎日を送っていたある日、ファニーが身に覚えのない罪で逮捕されてしまう。彼を信じるティッシュと家族は、ファニーを助け出そうと力を注ぐ。