マッキントッシュの男(1972)


モーリス・ジャールのスコア

原作は「高い砦」のデズモンド・バグリイが1971年に発表した冒険小説


映画のほうは、わかりにくい、つまらないと

キネマ旬報でも酷評だったということです


確かに、登場人物の目的や描写がはっきりしないうえ

原作を読んでいないと意味が不明な点もありますが

俳優とロケーションは魅力的で

私はそれほど酷い作品だとは思いませんでした




リアデンニューマンはプロの泥棒

マキントッシュという男に呼ばれ

郵便で送られるダイヤを強奪するという仕事を請け負います
スミス夫人(ドミニク・サンダ)という有能な秘書のおかげで下準備も完璧
しかしリアデンは犯行後すぐに逮捕され刑務所に入れられてしまいます


そこに謎の秘密組織スカペラーが現れ

リアデンに高額な報酬と引き換えに脱獄をもちかけます

そしてソ連のスパイのスレードとともに

見事に脱出させることに成功するのです




イギリスの刑務所の制服がおしゃれすぎて

ホントにこんなの着ていたらびっくりです(笑)

クレーンを使っての脱獄は見ごたえがあってGOOD


刑務所から出たのはいいものの、場所(アイルランド)も

わからない潜伏先の屋敷に連れていかれ

支払いの確認が済むまで監禁されるリアデン




実はリアデン泥棒ではなく、英国諜報部員

スレイドの逃走を防スカペラーを探ることが任務でした


リアデンが諜報部員だと知っていたのは、上司であるマッキントッシュだけ

しかしなぜかそのことがスカペラーにバレて命を狙われてしまいます

しかもマッキントッシュが襲撃にあい瀕死の重体




黒幕はマッキントッシュと親交の深い

下院議員ウィーラー(ジェームズ・メイソン)だったのです


スカペラーの屋敷から脱出したリアデンは

スミス夫人(本当はマッキントッシュの娘)に連絡し

ウィーラー議員の乗るヨットを追跡することにします




リアデンはウィーラーとスレイドを追い詰め

マッキントッシュが首相あてに手紙を書いていたことを告げます

それはウィーラーが刑務所に入る内容のものでした


だけどウィラーは言います

「君は私を撃てやしない

 賭けてもいい、撃てやしないさ

 だから私はここから出ていく」




同じスパイ同士

お互いの境遇は、お互いよくわかりきっている

ふたりを見逃がそうとするリアデン


その瞬間銃声が鳴り響き

スミス夫人は何回も何回もウィラーとスレイドを撃ち

蜂の巣にしてしまいます

彼女には父の敵への怒りを抑えることができなかったのです




そして「あなたも殺したいわ」とリアデンに言います

しかし殺すことはできませんでした

それはリアデンを好きになりかけていたから


だけどふたりが結ばれることは、もうありません




ということで、ドミニク・サンダジェームズ・メイソンが

いいところを最後みんな持って行ってしまい

ポール・ニューマンの見せ場はほとんどないのですが(笑)


「マルタの鷹」(1941)「キーラーゴ」(1948)ほどでないものの

ジョン・ヒューストンひさびさのハードボイルド節は快調


また当時は60年代にイギリス政界を震撼させたプロヒューモ事件という

政府高官による反逆行為が尾を引いていたということで

今よりもっとリアリティを感じて見れたのではないかと思います




【解説】allcinemaより

別にアップル・コンピュータのセールスマンの話しではなく、いわんやお菓子屋でもなく、獄中の同業者を殺そうと、わざと投獄されるスパイにP・ニューマンが扮するスリラー。60年代に濫作された冷戦下の諜報戦を描く作品に酷似した雰囲気で、ヒューストンにとってもニューマンにとっても価値ある仕事とは言えないだろうが、謎めいたD・サンダや、やはりレトロなM・ジャールのテーマ曲がそれなりに印象に残る。ただ、W・ヒルが脚本を書いたにしては、そんなシャープさとは無縁だったような……。大ベストセラーの原作(D・バグレイの同名書)によほど忠実だったのか。その頃珍しかったアイルランド・ロケが見れたのも得点(ヒューストンの別宅がある、彼曰く“第二の故郷”がアイルランドなのだ)。