ぶあいそうな手紙(2019)

原題は「AOS OLHOS DE ERNESTO」(エルネストの目に

気難しくて孤独な老人が、隣人との交流によって心を開いていく・・

よくある話なんですが

(不愛想なのは手紙ではなくお爺ちゃん 笑)

ちょっと捻ったラストが微笑ましく、優しい気持ちになれる

あまり見る機会はないですが、ブラジル映画には秀作が多いですね

挿入歌の「ドレス一枚と愛ひとつ」(カエターノ・ヴェローゾ)もGOOD

ブラジル南部のポルト・アレグレでひとり暮らしをしている

ウルグアイ人で78歳になるエルネストは目が悪く

サンパウロに住むひとり息子はアパートを売り

一緒に暮らそうといいますが、エルネストは頑なに反対します

 

ブラジルの医療制度はどうなっているのかわからないけど

白内障だと思うんですよね

息子には強気なことを言ったけど正直ほとんど見えない

週に一度ヘルパーのクリスティナが掃除などの家事をしてくれます

毎日、新聞を(自分が読んでから)届けてくれる

友人で隣の部屋のハビエルが、旧友のオラシオの妻ルシアから

手紙が来ていることを教えてくれました

 

エルネストがハビエルに代読を頼むと

手紙はオラシオが死んだという知らせでした

ハビエルがオラシオが死んだならルシアと一緒になるチャンスだと

エルネストをからかいます

その短いシーンで、エルネストがルシアという女性に思いを寄せていたこと

ルシアはエルネストではなく親友のオラシオと結婚したことがわかります

エルネストは親友の死をふざけるなと怒り

ハビエルから手紙をとりあげますが

どうしても続きが知りたい

 

でもいくら自分で読もうとしても白くてぼんやり

いきつけのカフェのウェイトレスに頼むと

ウルグアイポルトガル語はわからないという

そこで同じアパートの住人の女性の姪で

入院中犬の散歩を頼まれたというビアに代読を頼むことにしました

(エルネストの落としたラザニアを犬が食べてしまい知り合う)

 

ビアはずうずうしく、勝手に家にあがりこんでくるし

おまけに「ドラゴンタトゥーの女」だけど(笑)

エルネストはビアの朗読をとても気に入りました

クリスティナはエルネストが

ビアに騙されているのではないかと心配です

案の定エルネストの留守中に部屋に忍び込み彼のお気に入りの本を盗み

本が欲しかったのか、と安心したのもつかの間(笑)

結局お金も盗む

不審に思い戻ってきたエルネストと鉢合わせ、ピアノの影に隠れます

 

そこでエルネストは息子に電話をかけます

朗読を頼むのに女の子を雇いたいのだけどどうだろう

でもこれエア電話なんですね

エルネストはビアが盗みに入ったことも

お金がなくなったことにも気付いていたのです

彼女はいなくなり、姪というのも嘘で

入院中勝手に寝泊まりし冷凍庫の食料品を食べて

クビにしたのよ、という犬の飼い主

 

しかしビアひょっこり姿を現わし、お金も戻していました

エルネストはビアに本をプレゼントし、部屋も貸すことにします

目が見えないからこそわかる、彼女の誠実さ

(目が見えないのにビアの顔のあざにはすぐ気付く 笑) 

そうしてビアの代筆でルシアとの文通が始まり

エルネストとビアの絆は強いものになっていきます

親切心でクビになったクリスティナは可哀そうだけど

 

そんな時ハビエルの奥さんが急死してしまい

ハビエルは妻を埋葬するため故郷のブエノスアイレスに行き

そのまま娘のいるブエノスアイレスで一緒に暮らすといいます

そしてエルネストに、ビアはまだ若く未来があると伝えます

それは「死を受け入れる準備をしろ」ということ(たぶん)

エルネストは荷物をまとめ部屋を片付け

ビアに「最後の手紙を書いてほしい」と頼みました

それは息子に宛てた、いままで言えなかった深い愛情と

「・・・ウルグアイへ向かう ルシアの元へ

というものでした

 

ビアにアパートの鍵(と、たぶん男との手切れ金)を渡し

タクシーに乗り込むエルネスト

ルシアは突然やってきたエルネストに驚きながらも

彼を暖かく迎え入れるのでした

孤独な老人が本当に欲しいのは話し相手なんだね

そしてささやかな優しさ

相手が愛する人なら、なお嬉しい

年寄りにだって、希望があっていい

 

うんうん、息子の世話になるのは

もう少し先でもいいよ(笑)

 

最近は忘れかけている「困ってる人を助る」という気持ちを

思い出させてくれる作品です

 

 

【解説】allcinema より

視力を失いつつある頑固な独居老人と、ひょんなことから手紙の代読を頼まれた若い娘との奇妙な交流の行方を描いたハートウォーミング・ドラマ。主演は「ウィスキー」のホルヘ・ボラーニ、共演にガブリエラ・ポエステル、ホルヘ・デリア、ジュリオ・アンドラーヂ。監督は「世界が終わりを告げる前に」のアナ・ルイーザ・アゼヴェード。
 ブラジル南部の街、ポルトアレグレウルグアイからこの地にやって来て46年になる78歳のエルネスト。妻に先立たれ一人暮らしをしている彼は、もともと頑固な上、今では目がほとんど見えなくなってしまい、すっかり投げやりな日々を送っていた。そんなある日、一通の手紙が届く。差出人はウルグアイ時代の友人の妻。しかし文字が見えず途方に暮れたエルネストは、偶然知り合った23歳のビアに代読を頼むことに。これがきっかけでビアはエルネストの部屋に出入りするようになり、互いに孤独を抱えた2人の間にはいつしか奇妙な絆が芽生えていくのだったが…。