ヒストリー・オブ・バイオレンス(2005)





ファーストシーンからいい

強盗殺人を続けながら旅をしているふたりの男

特に死んだ様な表情若い方がいい

このヤバイふたりの物語かと思いましたが

違いました


クローネンバーグ版「わらの犬」という感じ

日常は善良な市民のなかにも、隠れた暴力性はあり

普段は抑制されているその感情が

どのきっかけで爆発するかは分からないのです

とはいえ原作ありきの作品なので

監督個人作家性である変態性はそれほど出ておらず

粘液ヌルヌル、異形、奇形を期待すると的外れですが

(期待していたの?笑)






チアガールプレイに、階段セックスでは

すり傷のある背中の裸体をワンカット入れるという細かい演出

飛び散る血液、損壊した肉体の生々しさをカメラは逃さず

妥協のない暴力やセックス描写は、さすがというべきでしょう

カメラはクローネンバーグでお馴染み、ピーター・サシツキー



平和な田舎町で妻と息子と幼い娘と暮らすトム(モーテンセン

ある晩、彼の営むダイナーにふたり組の強盗殺人犯がやってきます

ウェイトレスが殺されそうになったとき、トムはとっさに犯人に飛び掛かり

彼らの銃を奪い強盗を撃ち殺してしまいました


事件はニュースとなり、トムは一躍ヒーロー扱いされることになります

しかしそのニュースがきっかけで

片目の潰れた男フォガティエド・ハリス)がトムのところにやってきて

トムのことを「ジョーイ」と呼び、つきまといが始まりました


  



アクション俳優に負けないくらい
強い、早い、ヴィゴ・モーテンセン

毒、毒、毒をまき散らす、不気味なエド・ハリス


上手いですね、どちらを応援していいかわかりません

交際を申し込まれたらどちらを選んだらいいのでしょう

(どっちも申し込んでこないって)



やがてトムはフォガティに襲われますが

息子のジャックが背後からフォガティを撃ち、トムは命拾いします

トムは家族の安全を守るため、フィラデルフィアに行き

兄であるマフィアのボス、リッチー(ウィリアム・ハート)に会います

そしてリッチーとその一味を全員射殺してしまうのです






主人公は温厚でよき夫で父親であるというトムという人格と

すぐキレてしまうジョーイというふたつの人格を持っています

その潜在的な暴力性は、どの人間も持っている可能性があります

私にも、あなたの中にもジョーイはいるかも知れません


彼が繰り出す暴力は、それによって身を守るというもの

そのことは息子にも感染し、暴力は過激さを増していきます

暴力のたびに主人公も傷を負っていきます

その過程に、「AHistory of Violence」というタイトルの意味を

問いかけているのでしょう



正義のためなら、暴力は正しいことなのか

家族を守るはずが、家族との間にできてしまった溝


ラストの食卓で幼い娘が差し出すカトラリーに

息子が差し出す食事に、トム同様に少しホッとします
しかし奥さんは、夫が帰ってきたことで

不安に怯えたと思います


夫が怖いからではありません

息子もいつかは、きっと



グロテスクなシーンもあるバイオレンス映画でしたが

クローネンバーグにしては見やすいほうなので

クローネンバーグ入門編としておすすめできると思います


そしてクローネンバーグ × モーテンセン × エド・ハリス様なら

私の「お気に入り」にならないわけがありません






【解説】allcinemaより

ある事件をきっかけに夫の過去を巡る黒い疑惑が浮上、平穏だった一家が暴力と罪の渦に呑み込まれていくさまを、リアルでショッキングな暴力描写とともに綴る衝撃のサスペンス・ドラマ。同名グラフィック・ノベルを鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督が映画化。主演のヴィゴ・モーテンセンをはじめ、マリア・ベロエド・ハリスウィリアム・ハートら実力派俳優陣による迫真の演技合戦もみどころ。
 インディアナ州の田舎町で小さなダイナーを経営するトム・ストールは、弁護士の妻と2人の子どもとともに穏やかな日々を送っていた。そんなある夜、彼の店が拳銃を持った2人組の強盗に襲われる。しかしトムは驚くべき身のこなしで2人を一瞬にして倒してしまう。店の客や従業員の危機を救ったトムは一夜にしてヒーローとなる。それから数日後、片目をえぐられた曰くありげな男がダイナーに現われ、トムに親しげに話しかける。人違いだと否定するトムだったが、トムの過去を知るというその男は、以来執拗に家族につきまとい始める。