浪花の恋の物語(1959)




「櫛は縁を切るという謎言葉」

カメラがいいですね、流麗な撮影にうっとり。
そして見事な美術、これが有名な東映美術なのかと唸ります。
昔の遊郭や商人の家はこういう造りだったのでしょうね。
三味線で奏でる音楽も耳に心地よい。

遊女とのたった一夜の契り。
だけれどそれは、真面目で一途な男を
破滅への道へと向かわせてしまいます。

飛脚問屋の養子として働く堅物な男、忠兵衛。
もっと遊ばなきゃいかんと仲間に連れて行かれた遊郭
そこで遊女梅川と出逢います。

梅川はやさしく心の美しい女でした。
男たちは彼女の女らしさに、母性に惹かれます。
そして梅川にこれ以上ないくらい良い条件で身請けの話がやってきます。

忠兵衛もまた梅川に本気になっていました。
祝言を挙げようとしている梅川に我を失い
梅川を身請けするため米子藩の三百両に手をつけるという
処刑を免れない大罪を犯してしまいます。

それは自分たちの人生を狂わせただけではありません。
養子先の親も商売をも破産させ
周りにいるすべての人間に迷惑をかける行為だったのです。

ただ純愛を貫きたかった・・・
ただそれだけだったのに。

ただただ美しく、儚い。

とにかく見事な美の世界を堪能できる作品。
美術好きの方にはぜひ見ていただきたいと思います。



【解説】allcinemaより
近松門左衛門作の人形浄瑠璃冥土の飛脚』と、それをもとに作られた歌舞伎「恋飛脚大和往来」を、成沢昌茂が脚色し内田吐夢が監督。作者である近松門左衛門狂言回しのように登場させ、物語に奥行きを持たせた構成が高く評価された。
飛脚の忠兵衛は知り合いに無理矢理連れ込まれた郭で、梅川という遊女と出会う。その日から、忠兵衛は毎日にように梅川を訪ねるようになった。そんな二人の様子を、近松門左衛門が隣室で見聞きしていた。梅川の身請け話を聞いた忠兵衛は、あずかった武家の金を郭の主人に渡し、梅川を連れて出て行った。二人は忠兵衛の父が住む田舎の村を目指すが、武家の金に手を出すのは犯罪であり、村の入り口で追っ手に捕まってしまう。