飢餓海峡(1965)


 
 
「あんたの歩いて来た道には草木も生えない」
 
ずいぶんと画質が悪いなと思いましたが。笑
W106方式という撮影で意図的に粒子を荒くしているのですね。
3時間強というとても長い作品でした。
 
戦後間もない日本。
誰もが生きること、食べることにただ必死だった時代。
 
殺人強盗犯の犬飼(三國連太郎)を10年という歳月をかけ
執念で追う刑事弓坂(伴淳三郎)の物語。
そして犬飼とたった一度寝ただけで10年という歳月
一途に犬飼を愛し続けた娼婦八重(左幸子)の物語。
 
犬飼は盗んだ金で実業家として成功します、樽見と名を変えて。
そしてたったひとり、自分の過去をしっている八重の存在が
邪魔になります。
八重を信じることができなかったのです、そして八重を殺します。
八重の死体から見つかった新聞の記事と切った爪。
 
このように、男性の身体の一部を肌身離さず持ち歩くというと
阿部定を思い浮かべるのは私だけでしょうか。
内田吐夢監督も少しは意識していたのではないかと想像します。
異常ではあるけれど、愛の執念。
 
八重の持ち歩いていた爪が証拠となり逮捕された犬飼は
護送中の連絡船から津軽海峡に身を投じます。
 
最期まで自分勝手でズルくて最低の男・・
 
見ごたえ十分の傑作に間違いないでしょう。
たとえあのボロ船で、津軽海峡を渡るのは100%不可能だとしても。笑
 

 
【解説】allcinemaより
水上勉の同名推理小説内田吐夢が映画化。「砂の器」と並び、日本映画の傑作と称される。東映が監督に無断で編集した167分版と、監督自身の手による183分の完全版がある。昭和22年に青函連絡船沈没事故と北海道岩内での大規模火災が同時に起きる。火災は質屋の店主を殺害し金品を奪った犯人による放火と判明。そして転覆した連絡船からは二人の身元不明死体が見つかった。それは質屋に押し入った三人組強盗のうちの二人であることが分かる。函館警察の弓坂刑事は、事件の夜に姿を消した犬飼多吉という男を追って下北半島へ赴く。