「極限に追い込まれたヒトの輝きは
極限状態を凌駕し自己の実存として覚醒され、それは山をも動かすこととなる
その山とは一人ひとりの心、0.5ミリ程度のことかもしれないが
その数ミリが集結し同じ方角に動いた時こそが、革命の始まりである
今日的日本人にその魂は残されているのだろうか 」
”静電気が起こるくらい近い、人と人との距離感が0.5ミリ”
ケアヘルパーの4つのオムニバスのような映画
高齢者の遺産を狙う”後妻業”のような
女性介護師の話かと思ったらそうではなく
ホームレスの女の子が町で見かけたおじいちゃんの弱みに付け込んで
家に住まわせてもらうものの、料理上手で(笑)
頑固で孤独でふてくされているおじいちゃんの心を癒すというもの
そこに、自殺、詐欺、ジェンダー、近親相姦という
社会問題や重いテーマが加わってきます
片岡家で(住み込みで?)おじいちゃんの面倒を見ている
ケアヘルパーのサワ(安藤サクラ)は、娘の雪子(木内みどり)から
「おじいちゃんの冥土の土産に寝てくれない?お金は弾むから」
と頼まれてしまいます
ほとんど寝たきりで自分のことは何も出来ないおじいちゃん
当然ただの添い寝だと思っていたら
なんとこのじいさん、かなりのイロ呆けだった
サワは襲われそうになり、その騒動でストーブの火が
おじいちゃんの身体に燃え移ってしまう
おじいちゃんから逃げなきゃいけないわ
おじいちゃんの火は消さなきゃいけないわ
しかも2階の部屋から階段を駆け下りると
そこには雪子の首つり死体と
それを見つめる自閉症気味で言葉を話さない、雪子の息子のマコトの姿
警察の事情徴収が終わり、ATMで雪子から振り込まれた現金を降ろす
ところが現金をポケットに入れたコートを電車に忘れてしまう
そこでカラオケボックスをホテルと間違えているおじいちゃんを見つけ
無理やり一緒にカラオケ、食べ物と飲み物を奢ってもらいます
夜明けにはおじいちゃんから「楽しかった」と
コートと一万円札を貰います
次にサワが見つけたのは、自転車の窃盗癖のある坂田利夫
警察に届けると脅し、勝手にアホの坂田の家に上がり込み料理する
そしてアホの坂田が、コツコツと貯めた1千万円を
ビジネスヤクザの投資詐欺に預けようとしていることを知ります
長年大切にしていた名車「いすゞ117クーペ」をサワにプレゼントします
ここからちょっと日本版「グラントリノ」(2008)(笑)
だけど金もなければ宿もない、クーペで寝泊まりし
ショッピングモールのトイレで身体を洗いサンプル品の香水で体臭を消す
そこで見つけたのが、おひとり様で時間を潰す真壁(津川雅彦)
本屋でエロ本を上着に隠した真壁を捕らえ、家まで送り
新しいヘルパーだと自己紹介
最初は上手くいっていたものの
自分より仕事が出来るサワに浜田は嫉妬し
真壁の姪の久子(浅田美代子)に連絡をして来てもらいます
すると久子は介護は自分がするからとサワをクビにしてしまう
お別れの日、真壁は自分の戦争体験を吹き込んだ
カセットテープをサワに渡します
そこに録音されているセリフは、監督であり原作者の安藤桃子が
戦争体験者から実際に聞いた話ということ
(だからといって反戦映画ではない)
再び行く当てもなく、再彷徨うサワの目の前に現れたのが
駄菓子屋で万引きしていた片岡家のマコト
マコトはかって「海の家」だった建物で、父親(柄本明)と暮らしていて
サワはマコトの部屋に泊めてもらうことにします
そこでもサワは働き者で(笑)ごみ屋敷を掃除し、料理を作る
父親は海岸で空き缶などを集め収入を得ているようですが
サワにはセクハラ、マコトにはDVというトンデモとうちゃん
旦那(柄本佑)の父親とここまで絡む安藤サクラの凄まじさ(笑)
とうちゃんの発言から、マコトがイロ呆け爺の子であること
マコトの脚に血が流れたことで、実はマコトが女の子であること
そして本当は自閉症ではなく、言葉を話せることを知ります
マコトが近親相姦の子と知って、とうちゃんは自暴自棄になったのだろう
離婚した雪子は実家に帰り、マコトがイロ呆け爺にレイプされないよう
男の子として育て、学校にも行かせなかったのかも知れない
雪子の残した赤いワンピースを抱えて泣くマコト
そうしてもうひとつ、トランクから出てきたのは
「サワちゃんありがとう」と書かれた封筒に入った100万円
サワとマコトはふたり、クーペに乗って旅に出る
三時間強という長尺だし、明るい話ではないし
結局サワが何者なのかわからないし(笑)
でもお金は必要だけれど、お金に執着しないことが
この作品を爽やかにしている
とにかく最初から最後まで、安藤サクラのパワーと才能を感じる
今一番スゴイ女優かも知れないですね
【解説】ウィキペディアより
介護ヘルパーの山岸サワは、ある日派遣先で寝たきり老人の娘から唐突に「冥途の土産におじいちゃんと寝てほしい。」と依頼される。サワは添い寝するだけとの条件で引き受けるが、その日のうちに大事件に巻き込まれ、職場も住居も失ってしまう。
住み慣れた街を離れたサワは、見知らぬ土地土地で見つけたワケありの老人につけこみ、彼らの生活に入り込むおしかけヘルパーを始める。
監督・脚本は作者である安藤が担当し、主役には実妹の安藤サクラを迎え、エグゼクティブプロデューサーは実父の奥田瑛二、フードスタイリストは実母の安藤和津が務めた。
ロケは2013年3月から4月にかけて高知県で行われ、同年10月の四万十おきゃく映画祭で初上映。2014年10月に高知市の城西公園に設置した仮設劇場で先行上映したのち、11月8日より全国公開が開始された。