下妻物語(2004)




「不幸に耐えることより幸せを勝ち取る方が勇気がいる」





「悪いけど、負ける気がしねえぜ」



”映画”というジャンルとは、少し違う代物ですが
面白いか、面白くないかといえば、最高に面白い
ギャグの小ネタもパンチが効いていますし
深田恭子ちゃんも、土屋アンナちゃんも
これ以上にない適役でしょう

そして男友情ものは世界中に多くりますが
数少ない女の友情もののひとつだと思います





実在する茨城県下妻市、行ったことはありませんが
ジャスコと、牛久の大仏と、貴族の森をネタにしすぎ(笑)
どこの田舎にもある「あるある」

何よりロリータファッションを愛し、ロココを崇拝し
刺繍の天才的才能がある桃子(深田恭子)は
大好きなBABYTHE STARS SHINE BRIGHT
(ベイビーザスターズシャインブライト)
お洋服を買うために、テキ屋の父親の
「ヴェルサ*ピー*チ」のバッタものを
ネット販売してお小遣い稼ぎをしようとします


その「ヴェルサ*ピー*チ」の服を求めてやってきたのは
超ヤンキー女のイチゴ(土屋アンナ
そしてその日からなぜかイチゴは
桃子のところへやってくるようになります





桃子のように自分の世界観を持ち、他人に干渉しない人間は
ある意味一緒にいて居心地がいいのだと思います
例え関わり合いは持たなくても
自分と同じように他人も認める人間
常識や世間体や無意味なルールのことなど気にしないのです

いつも行動を共にしているうちに
やがてふたりの間には友情が生まれます
そして暴走族を脱退するため
「ケジメ」をつけなければならないイチゴを
桃子は助けに行いきます


人気テレビCMの監督というだけあって、見せるのがうまい
見る側の気持ちを掴むのが、遊び心がうまい





ヴェルサ*ピー*チ」と「ユニバーサル・スタジオ」のWネーム
樹木希林おばあちゃんの虫を捕まえる動きが”座頭市”並
ヤンキー伝説の原チャリ「HONDADJ1」のナンバーが”4649”
喫茶「貴族の森」で鼻に煙草つめるイチゴ

移動八百屋屋の荒川良々さん
一角獣の阿部サダヲさん
パチンコ店長、生瀬勝久
小池栄子姐さんの”いい女”っぷり
篠原涼子さんの、水着コンテストでの決めポーズ

おまけの水野晴郎さん(笑)
ここまで細部までこだわってくれるとは





そしてラストの深キョンの豹変ぶり
ヒラヒラレースに身を包んだ正真正銘のゴスロリ
だけど生まれも育ちも、実は「ホンモノ」の極道
ついにキレてレディースのリーダーに啖呵を切ることになります
自分こそが伝説のヤンキー「卑弥呼」の一人娘なのだと

それは全部嘘っぱちなのだけど(笑)
それはともかく、爽快で、清々しく、気分がいい





自分らしく生きるということは
どの時代でも言われ続けていることだけど
誰にでも容易できることではありません

桃子は刺繍の腕を見込まれ、高校卒業後はBABY
デザインの道が開けました
イチゴにはモデルのオファーがきます
だけど今は、ふたりとも自分らしく生きるほうを選ぶのです
この下妻で


笑えるギャグ映画でありながら
「自分らしさ」を見失わないという
しっかりとした軸のあるこの作品

そのうえ豪華キャストのすべてがハマリ役

これはB級邦画の傑作に間違いありません
私からもお気に入りを献上したいと思います




【解説】allcinemaより

乙女のカリスマ嶽本野ばらの同名小説を映画化した女の子青春コメディ。ロリータファッション命のマイペース少女が、ひょんなことから全く対称的なヤンキー娘と出会い、一緒に小さな冒険を繰り広げる中で次第に奇妙な友情を築いていく姿をテンポ良く爽やかに描く。主演は「阿修羅のごとく」の深田恭子と人気モデルの土屋アンナ。監督はCM界の鬼才・中島哲也
 茨城県下妻市。田んぼだらけで未だにヤンキー文化が隆盛を誇る田舎町。そんな土地で、全身フリフリのメルヘンチックなファッションに身を包み周囲から浮きまくりの女子高生・竜ヶ崎桃子。彼女は、東京の代官山にある某ロリータファッションブランドに熱を上げており、片道約2時間半の道のりにもめげず、毎週のように通い詰めていた。桃子は服代を稼ぐため、父親がかつて失敗し家に山積みだった某有名ブランドの偽物商品の個人販売まで始めてしまう。するとある日、特攻服で原チャリをかっ飛ばすヤンキー娘・イチゴがそれを買いに現われた…。