フォッグ・オブ・ウォー /マクナマラ元米国防長官の告白(2003)


 
 
ほぼ全篇、ロバート・S・マクナマラ氏ただ一人の証言。
 
第二次世界大戦中、マクナマラ氏は経営管理の理論を戦争に応用。
攻撃効率を高めるため、統計を取り分析するが、
彼の報告書を元に日本に無差別絨毯爆撃が行われた。
指揮官は後に広島・長崎に原爆を落としたカカーティス・E・ルメイ少将。
「負ければ戦犯、絶対勝たねばならない」
「勝ったから許されるのか? 私もルメイも戦争犯罪を行ったんだ・・・」
 
東京大空襲と原爆投下での死者の数さえ
ただの数字のデータなのかと思えば背筋が凍ります。
 
キューバ危機については
「核戦争を回避できたのは、ただ運が良かっただけのことだ。
同じ危機が今もあるのだ」と。
 
キューバ・ミサイル危機のとき、
アメリカ政府はソ連の立場に立って状況を見ることができたのに、
ベトナム戦争ではそれができなかった」
 
そしてマクナマラ氏の「11の教訓」
1:敵の身になって考えよ。
2:理性は助けにならない。
3:自己を越えた何かのために。
4:効率を最大限に高めよ。
5:戦争にも釣り合いが必要だ。
6:データを集めろ。
7:目に見えた事実が正しいとは限らない。
8:理由付けを再検証せよ。
9:人は善をなさんとして悪をなす。
10: “決して”とは決して言うな。
11:人間の本質は変えられない
 
 
私のこの作品でのマクナマラ氏の印象は
現実的で、正直で、仕事を全うする人間というイメージでしょうか。
味方であれば、彼以上に最高の人物はいないかもしれません。
 
そしてアメリカという国が、もし戦争ではなく、
平和のために役立つ仕事を、彼に与えていたなら・・・
そう思うと残念でなりません。
 
「私たちは、殺しあいをするべきではない」
そう語った彼の発言が、真実に聞こえたのも確かなのです。
 

 
【解説】goo映画より
ロバート・S・マクナマラ。20世紀アメリカ屈指のエリートとして、政界、経済界を牛耳った「切れ者」。ハーバード大学院卒、フォード自動車会社社長、ケネディとジョンソン政権下で国防長官、そして世界銀行総裁を務め、アメリカン・ドリームを実現したスーパー・エリート。そのマクナマラが、アメリカの栄光と影について赤裸々に語ったドキュメンタリー。2003年アカデミー賞ドキュメンタリー長編賞受賞。