家族(1970)


 
 
 
「遥かなる山の呼び声」に続く物語だったとは知りませんでした。
民子三部作ということで、第二作「故郷」という作品は残念ながら
まだ観ていません。
 
もの悲しい、切ない気持ちになる作品でした。
 当時は九州から北海道までの旅というものが
とても過酷であったんだなと思いました。
 
長崎県伊王島での生活に見きりをつけ、北海道の開拓村に引っ越そうとする
夫婦と子ども二人、そして祖父の一家。
途中大阪の万国博覧会を見学しますが、その後赤ちゃんが熱を出してしまいます。
急遽、家族は東京に立ち寄り、一泊して病院に連れていきます。
 
上野動物園で孫が店員からあんまんをもらうシーンが一番印象的でした。
笠智衆の毅然とした態度と言葉にグッときます。
 
「お前は乞食じゃなかやろうが。お前が欲しかごつ顔見せるけんで、
あん人が親切でくれたんつかんしれん。
ばってん、そりゃいかん。
欲しかときゃね、じいちゃんに言わんば。
じいちゃんな、いくらけん金ばもっとるけん。
ほら金、自分で払うてこんば。さあでけんか、それくらいのこつが。」
 
東京で赤ちゃんは死んでしまい、さっさと葬儀と火葬を済ませ
再び家族は北海道へと向かいます。
 
青函連絡船の中、民子(倍賞千恵子)は泣きます。
「うち帰りたか。島へ帰りたか」
 
やっとたどり着いた北海道。
地元の人たちが歓迎会をしてくれました。
でもその晩、おじいちゃんが布団に入ったまま息を引き取ってしまうのです。
 
精一(井川比佐志)は自分の我儘で北海道に移住したことを後悔し、
悲嘆にくれます。
 民子は、そんな精一を励ましました。
「やがてここにも春が来て、一面の花が咲く・・・」
 
子どもを失った母親の哀しみ以上の哀しみは、ないはずなのに・・
そして女性とは、生まれ育った故郷と離れて暮らすということは
男性以上に辛いものだと思うのです。
 
【あらすじ】ウィキペディアより
風見精一の一家は、故郷である長崎県伊王島から、開拓のため北海道標津郡中標津町へ移住することとなった。酪農を夢見ていた精一の決断によるものであった。妻の民子の反対により、当初は、精一が単身で移住することになっていたが、精一の固い意思のまえに民子が翻意し、結局子供2人を含む家族で移住することになったのである。同居していた精一の父源蔵については、高齢であることから、広島県福山に住む次男夫婦の家に移ることになっていた。一家は、桜が咲き始める4月はじめ、伊王島の家を引き払い、父親のため、まず福山に向かった。しかし、ここで、次男夫婦が必ずしも父親を歓迎していないことが明らかになり、結局、民子の発案により、父親も一緒に北海道へ移住することになった。こうして一家5人の列車を乗り継ぐ北海道への旅が始まった。