
「あなた、昔から周りの人間がバカに見えて仕方なかったでしょう?」
原作は「このミステリーがすごい!2023年版」で1位を獲得した
呉勝浩(ご かつひろ)の同名小説
東京都中野区の野方警察署に、自販機を蹴り壊し酒屋店主を殴った酔っ払い
自称「スズキ タゴサク」(佐藤二朗)が連行され
若手の刑事、等々力(染谷将太)と伊勢(寛一郎)が取り調べを行うことになります

酒屋店主が自販機の弁償と治療費を払えば示談すると言っていることを伝えると
全く記憶がないといいうスズキは、その金を等々力に立て替えて欲しいと頼みます
等々力がそれはできないと言うと、あなたが気に入ったと
自分は「霊感が働く」と、11時に秋葉原辺りで事件が起こることを予言
等々力も伊勢もスズキのたわ言だと信じませんでしたが、秋葉原で本当に爆破が起こり
さらにスズキは「霊感によるとあと三度、次は一時間後に爆発する」と予言
12時きっかり、東京ドームシティでも爆発が起こり
スズキは単なる障害と器物破損から、連続爆破事件の重要参考人になります

ツカミはばっちり(笑)
いきなりクライマックス
ただ取調室の苛立つ雰囲気に比べて
市街の爆発はありきたりのパニックシーンでつまらない
もう少し重々しくしてもよかったんじゃないでしょうか(笑)

そこで 等々力はスズキの取り調べから身元捜査に回され
警視庁捜査一課特殊犯捜査課から清宮(渡部篤郎)と
類家(山田裕貴)がやってきます
その間、伊勢とふたりきりになったスズキは
中学時代、想いを寄せていた「みのりちゃん」という少女がいたことを話します
時々みのりちゃんのあとをつけていたスズキですが
ある雪の日にみのりちゃんは教師によって屈辱され殺されてしまい
しかも犯人だと疑われたのは自分だった
だったら自分が本当に犯っておけばよかったと
伊勢と自分の不幸だった過去の秘密を共有するのです

新たにやって来た清宮には、「九つの尻尾」 というゲームを持ち掛けます
「あなたの心の形を当てる」 ため9つの質問に答えてもらうというもの
あの坂道のこと、覚えてますか?
そこで子どもがトラックに跳ねられた、あなたは思いましたよね?「汚い」って
1問目、「タイガース」 「体が牛で顔が人間」
あの辺りは坂が多いんだよね
重い荷物を積んだバイクが、エンジンを唸らせて坂を登っていく

類家は「体が牛で顔が人間」は(件/くだん)、 虎は(寅の刻=午後4時)
その場所が九段家の新聞配達店であると推測
一斉に捜査官が九段下の新聞店全てに聞き込み開始し
スズキの顔写真を見た新聞販売店の従業員が
数日前に面接に来た(運転免許がないので断った)男だと言います
その販売店のバイクから爆発物を発見
さらにパトロール刑事の矢吹(坂東龍汰)と
バディで後輩の倖田沙良(伊藤沙莉)通称サラダが
すでに配達に出たバイクを追いかけ
矢吹のとっさの判断で配達員から奪ったバイクを広場に乗り捨てます
刑事になりたい矢吹のやっちゃった行為でしたが
バイクは爆破、配達員の命を救ったのでした
スズキの話に爆弾のありかが隠されていることを信じるしかなくなった清宮

2問目は、さらに坂道は続き、あなたは中学生になり
クラスにいた「カトウくん」のこと覚えてますか?
彼は毎日教室の隅で生きた魚が陸に上げられたみたいに助けを求めていた
ある日、カトウくんは校舎から飛び降りて自殺してしまいます
あなたはあの時、どうして彼を見殺しにしたんですか?
3問目は、さらにあなたは成長し
あの坂道であなたの隣に立ってあなたの手を握った男
その人の名前は、ハセベユウコウですか?

「ハセベユウコウ」の名前が出ると現場が騒ぎ出し
後輩刑事の井筒(遠藤史也)とスズキの身元捜査をしていた等々力のもとに
ハセベユウコウこと元刑事の長谷部有孔(加藤雅也)の
妻に会いに行くよう連絡が入ります
長谷部は仕事も優秀で組織からの信頼も厚かったにもかかわらず
倫理的な問題で週刊誌から叩かれ鉄道自殺したとき
署内で唯一、長谷部をかばったのは等々力だけでした
「気持ちはわかる」と

学校教師による盗撮
カトリック界などでの聖職者の小児愛性
芸能人、スポーツ界や自衛隊員によるセクハラ
歪んだ欲望というものは決して許されないものではありません
しかも警察官もですが、人々の見本であるべき職業なのです
長谷部には誰もいない事件現場で自慰行為をしてしまうという性癖がありました
それを偶然見てしまった等々力は、長谷部を責めるのではなく
心療内科にカウンセリングに行くよう勧めます
しかしあろうことか、カウンセラーがわずかな現金欲しさに
週刊誌に現職刑事のありえない行為とリークしてしまいます
後でスズキとのやりとりで類家はスズキに
「ぶ厚いポークステーキ丼を食べて、泥のように眠る」と語りますが
誰にだって背徳的な行為は必要なのです
ただ類家のように理性を優先できる人間ばかりじゃない
だから等々力は長谷部の全く理解されない行為に対しても
自分はやらないけれど「気持ちはわかる」と答えたのだと思います

そうして等々力が長谷部の妻、石川あすか(夏川結衣)の住む家を訪ねると
あすかは淡々と長谷部の鉄道自殺による請求により生活が困窮したことや
いまはどうにか自分と同じヘアメイクの仕事をしている
娘の美海(中田青渚)のおかげで、こうして生活出来ているものの
長谷部が週刊誌の記事は本当だと打ち明けたことで一家は離散
誹謗中傷により長男の辰馬(片岡千之助)は大学に通えなくなり
今では行方不明だと打ち明けます
次のターゲットはどこかと焦る清宮に、4問目
スズキはせっかく気持ちよく寝てたのに、子どもの声がうるさくて邪魔をされた
たぶん近くに保育園か幼稚園があるのだろうと
「 夜が繰り返して(だいだい)色になる 」
「午(うま)は静かに食事をしている」というふたつのヒントを出します

清宮と類家が取調室を出て行き
再び伊勢とふたりきりになったスズキは
スマホを忘れた場所を思いだしたと言います
あなたにだけ教えるから恥ずかしい中身を消してほしいと
スズキの誘導によってスマホを見つけたという手柄を立てたい
事件解決にむけて成果を出したいと思わず焦ってしまった伊勢は矢吹に連絡を取り
極秘でスズキの言う喫茶店にスマホを取りに行くよう頼みます
類家は「まだパズルのピースが足りない」と清宮に訴えますが
オマエなら出来るという催促
「夜が繰り返す」と橙の「木」で、場所は代々木
午(うま)は十二支の方位(南)で
爆弾が仕掛けられているのは代々木の南側にある保育園か幼稚園と推測
対象となる全ての保育園と幼稚園に捜査が入ります

類家の不安は的中し、爆破が起こったのは同じ代々木でも代々木公園のほう
午(うま)は方位の南ではなく「午の刻」(11時~13時)のことだったのです
多くのホームレスが爆破により命を落とし
取調室に戻った清宮にスズキは
第6問、「あなたは今、ほっとしましたか?」と問います
死んだのは子どもたちではなく
ホームレスで良かったと思っているんじゃないですか?
スズキが清宮に突きつけた、命の選別、人間の選別
カッとなった清宮は彼を指さしたスズキの人差し指をへし折ってしまいます
「これがあなたの心の形」だと笑うスズキ

清宮の失態を受けて、代わりに類家がスズキの取り調べに当たることになります
高い知能を持ち、優れた人間観察の持ち主同士の直接対決
矢吹の不審な行動に気付いたサラダは強引に彼に同行し
ふたりは喫茶店のマスターから壊れたスマホを受け取りカバーを外すと
住所の書かれたシールが貼ってあるのを発見
伊勢と同じように手柄を立てたい矢吹はその建物に許可なく侵入すると
服毒死したと思われるふたりの男の遺体に
別の部屋では長谷部が独白する動画が繰り返しプロジェクターで映しだされていて
その近くにビニール袋を被り椅子に座った若い男の遺体を見つけるのでした
椅子に近寄った矢吹は、床に仕掛けられていた爆弾のスイッチを踏んでしまい
その部屋にサラダが入って来ます
長谷部の行方不明になっていた石川辰馬の現在の住所がわかったという
連絡が等々力と井筒のもとに入り現場に到着したと同時に
矢吹がサラダをかばおうとしたため遺体が爆発
矢吹の左足は吹っ飛び意識不明の重体
スマホといい、「みのりちゃん」の話といい
伊勢はスズキに飲まれてしまったことを類家に指摘されたのでした

さらにインターネット上のサイトやSNSで一斉に
スズキの「全て殺します」という動画が流れます
「子どもは殺します」(背が低いから)「妊婦は殺します」(面積が広いから)
「老人は殺します」(反応が鈍い)「善人は殺します」(おせっかいだから)
面白がる若者たちによって動画は拡散され
次の動画が流れると「いいね」や「再生回数」が一定数に達したことで
東京のあちこちで爆弾が起動し、野方警察署以外は危険だといいます
全ての環状線の駅は封鎖され
野方警察署に大勢の人々が助けを求め集まってきます
第7問、類家さん、あんた。俺に、死んでほしいと思ってる?
それとも、生きててほしいと思ってる?
「死んでほしい」
第8問、今ここで俺を殺せるボタンがあったら、それを押しますか?
「いいえ、生きて裁きを受けるべきです」

そこに矢吹を思うあまり、取調室に飛び込んできたサラダ
スズキに銃を向けようとしますが、清宮や伊勢に取り押さえられ
冷静さを取り戻すものの、責任は免れない
しかし普段は全く使えない刑事課長の鶴久(正名僕蔵)は
人手不足を理由にサラダの失態を黙認
野方警察署に群がった人々の警備にあたるよう命じるのでした
等々力らの聞き込みや警察の捜査により
石川辰馬は理系大学で時限爆弾を作る知識がありえたこと
辰馬の爆破計画に共感したシェアハウス仲間の山脇と梶は
それぞれ新聞配達員と自動販売機の飲料補充員をしていたことが判明
元シェアハウスの住民だったという若者は
大家に内緒で新たにホームレスも住まわせることをきっかけに
係わりを絶ったことを評言

類家は長谷部が環状線(阿佐ヶ谷駅)で鉄道自殺をはかったことから
逆恨みした石川辰馬により環状線の駅が狙われ
自動販売機の飲料に爆弾が仕掛けられていると予測
自動販売機を調べるよう指示を出しますが
莫大な経済的損失になるという上層部からの圧力で
警視庁捜査一課長の杉本により封鎖解除が断行されてしまいます
駅構内に人々が押し寄せ
飲み物を買おうとした人が自販機のボタンを押した瞬間、自販機が爆発
環状線の5駅で多くの犠牲者が出てしまいます
爆発のニュースが取調室にも伝わり、一時騒然となりますが
類家とスズキだけは冷静
スズキの身柄が移送されることになり
第9問、「これから、一生この俺を覚えててくれる?」
「いいえ、忘れます」
するとスズキは「これで終わりだと思いましたか?」と
最後の爆弾があることを匂わせます
(製作された爆弾は20個だが、爆発したのは19個だったらしい)

類家は環状線の爆発について
秋葉原、東京ドーム、九段下、代々木のようにスズキからのヒントは一切出ていない
もしかして環状線に仕掛けられた爆発物は別人によるもので
スズキも詳細は知らなかったのではないか
スズキ、長谷部、等々力、野球、ホームレス、シェアハウス
石川あすか、辰馬の関係を
これまでのスズキとの会話から読み取ろうとする
類家の予想はこう
スズキがかって知り合ったというホームレスは石川あすかのこと
ふたりは親しくなり
ドラゴンズファンだったあすかからドラゴンズの野球帽をもらう
やがてあすかを息子の辰馬がシェアハウスに迎え入れ
辰馬、山脇、梶との同居生活がはじまりますが
山脇と梶が死んでいるのを発見
辰馬から環状線の無差別テロを知らされたあすかは思わず辰馬を刺殺
あすかはスズキに自分と辰馬の身代わりになってほしいと
助けを求めに行ったのではないのかと
スズキは辰馬の殺害と、環状線の爆破を自分のストーリーにするため
秋葉原、東京ドーム、九段下、代々木の爆破を計画
あすかの犯行を隠すため、警察に辰馬の遺体を見つけさせ爆破するよう細工
ここにきて、東出圭吾の「容疑者Xの献身」みたいになってきましたが(笑)
類家は最後の爆弾はあすかが持っていると予測
そして身の安全を求め野方警察署に殺到する人々のなかに
あすかがいることをサラダが発見
サラダが署内にあすかを案内すると、彼女のトートバックの中には時限爆弾
あすかは「すべてを終わらせて」と暴れますが
回収された爆弾は不発弾、フェイクでした
類家の、もしかしてあすかの本当の気持ちは
スズキから自首するよう言われたかったんじゃないだろうかという問いに
スズキはかすかに表情を変えます
本庁(警視庁)へと移送されるスズキを見送る等々力に
スズキが「あんたも俺と同じだ」 と声を掛けると
等々力は「俺は、あんたのようにはならない」と無表情に答えたのでした

ラスト、スズキは一貫して「霊感・記憶喪失・催眠」を主張
あすかも、スズキのことなど全く知らない
事件は未解決のまま
「最後の爆弾は、まだ見つかっていない」というナレーションで締めくくられます
呉勝浩による続編「法廷占拠 爆弾2」では
スズキの身元や、あすかとの関係の真実の明かされると思いきや
そうでもなく(笑)
レクター博士よろしく、スズキタゴサクのシリーズものになりそうそうです
【解説】映画.COMより
「このミステリーがすごい!2023年版」で1位を獲得した呉勝浩の同名ベストセラー小説を実写映画化したリアルタイムサスペンス。東京のどこかに“爆発予定の爆弾”が仕掛けられたという前代未聞の事態のなか、取調室での攻防と都内各地での爆弾捜索の行方を同時進行で描き出す。
酔った勢いで自販機と店員に暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。やがてその言葉通りに都内で爆発が起こり、スズキはこの後も1時間おきに3回爆発すると言う。スズキは尋問をのらりくらりとかわしながら、爆弾に関する謎めいたクイズを出し、刑事たちを翻弄していくが……。
スズキとの交渉に挑む刑事・類家役で山田裕貴が主演を務め、スズキタゴサク役で佐藤二朗、爆弾捜索に奔走する巡査・倖田役で伊藤沙莉、スズキの過去を探る刑事・等々力役で染谷将太、類家の上司・清宮役で渡部篤郎、倖田巡査の相棒・矢吹役で坂東龍汰、スズキの見張り役を務める刑事・伊勢役で寛一郎が共演。「キャラクター」「帝一の國」の永井聡監督がメガホンをとった。ロックバンド「エレファントカシマシ」の宮本浩次が主題歌を担当。
2025年製作/137分/PG12/日本
配給:ワーナー・ブラザース映画