愚か者の身分(2025)

原作は第2回大藪春彦新人賞を受賞した西尾潤の同名小説で

金銭目的で戸籍売買に手を染めてしまった半グレの

まさしく愚か者の身分というか、愚か者が辿り着く結末の物語

ただちょっとラストには奇跡が起こります

「半グレ」とは堅気(一般人)ではないが

暴力団でもない「半分グレている」の意味の

(警察では「準暴力団」に位置づけている)

暴走族や不良仲間のOBを中心に構成され

暴行や特殊詐欺などの犯罪(反社会的行為)を行う組織のこと

新宿ゴールデン街で飲んだ帰り道

タクヤ北村匠海)が川に投げ捨てた白シャツを取ってくるよう命じられる

マモル(林裕太)

シャツを手にし、川を上がるとタクヤの姿はなく

警官の職質を受けたマモルは、川が「神田川」という名前だと初めて知ります

歌舞伎町で暮らすふたりはSNS上で女性に成り済まして男たちを誘い出し

オトシ(ハニートラップ)の希沙良(山下美月)を使って

大金と引き換えに(一時的に預かるだけだと)戸籍謄本を受け取ると

それを闇組織に売って収入を得ていました

現実は戸籍を売ってしまえば、就職はもちろん

住む場所を借りることが出来なくなったりします

戸籍を正常化する(取り戻す)ことは可能ですが

個人での手続きは難しく(弁護士に頼らなければならない)

さらに自首や捜査への協力が必要とされ

自らも戸籍法違反などの刑事罰に問われることになるそうです

こういう犯罪に手を染めてしまったり、巻き込まれてしまう若者は

(東京に住んでいても神田川も知らないくらいなので)

やはり知識というか、考える力が不足しているように感じますね

だから安易にお金を儲けることのほうを選んでしまう

だけど彼らにも、半グレでしか生きる方法がなかったことが

やがて明かされていきます

タクヤとマモルが関係する特殊犯罪グループの一億円が何者かに奪われ

元締めのジョージ(田邊和也)が必死で犯人捜しをしていると

行きつけのバーのマスターから聞かされたタクヤ

それが兄貴分(半グレ組織の指示訳)の佐藤(嶺豪一)から頼まれた仕事だと気付き

身の危険を感じたタクヤは逃走のため、情報屋の梶谷(綾野剛)に

運転免許証(身分証明書代わり)の偽造を頼みます

しかし自宅に戻ったタクヤはあっけなく襲われ

両眼をえぐり取られてしまいます

それを発見した希沙良は警察に届けるこも出来ず逃げ出します

タクヤと同じ目ようなに合うか、警察に逮捕されるかの2択)

ジョージからタクヤを山梨にある病院まで運ぶよう頼まれた梶谷

(中国人マフィアによる臓器売買ビジネスが行われている?)この病院で

移植のためのタクヤの腎臓を取り出すためだといいます

実際は腎臓だけで済むわけがなく始末しろということ

タクヤの両眼がえぐり出されたのもジョージの

(組織の金を着服した)「裏切り者に光を見る資格はない」という特論からでした

(金歯の田邊和也さん、マジ怖いです 笑)

タクヤが意識を取り戻すと、水と鎮痛剤を与える梶谷

(明らかに病院にいかないとヤバいレベルだがな 笑)

タクヤをこの世界に引きずり込んだのは梶谷でした

両親を失い、難病の弟の手術代のため梶谷に戸籍を売ったのがきっかけ

しかしお金が手に入る前に弟は死んでしまい

お金は弟の手術代ではなく葬儀代になってしまいます

タクヤは闇ビジネスの世界からマモルだけは助けたいと思っていました

マモルはネグレクト(育児放棄と貧困の中、教育もまともに受けれず

たぶん虐めにもあい、そのまま半グレとなってしまいます

でも素直でとても優しい子なんですね

だからタクヤはマモルを見捨てれなかった

マモルを守ることは、死んだ弟への償いの代わりだったのかも知れません

山梨の病院に辿り着いた梶谷は、そこから引き返す決意をします

さらに何も事情を聞かず、梶谷を助けようとしてくれる

銀座でホステスとして働く恋人の由衣夏(木南晴夏)が

大阪の西成(にしなり)にあるかっての勤め先のママに用意してもらった

隠れ家に潜伏します(ほぼ声だけの木南晴夏さんがイイ)

一方、マモルのところに

これが届いた時俺は、死んでいるか、海外に売られているだろう

だけど奴らの拠点は都会、できるだけ田舎に逃げてこの金でやり直せと

というメールが届き

タクヤから預かっていた冷凍鯵の腹から、運転免許証とロッカーを取り出し

ロッカーから現金を受け取ると

その中から2千万円を店員(デリバリースタッフ)として働いている

かってタクヤが戸籍を奪った江川(矢本悠馬に渡します

戸惑った江川が「どうして?」と訪ねると

「頼まれただけだから」とその場を立ち去ると

神田川の橋の上で大金の入ったリュックを降ろし

シャツを拾ったときのことを思い出します

隠れ家で祖母直伝「鯵の煮つけ」のレシピを梶谷に教えるタクヤ

煮つけのあまりの美味しさに梶谷が感動している頃

ジョージが属する特殊犯罪グループが一斉検挙

タクヤと梶谷の隠れ家の前にも、ふたりを逮捕しようと刑事が張り込んでいました

しかも刑事のひとりは江川

そう冒頭でタクヤに戸籍を売ったデリバリースタッフの江川は

特殊犯罪の身分秘匿捜査(覆面捜査だったのです

それからどれくらい時間が経ったのか

マモルが田舎町にある橋の上から海辺を見下ろすと

そこにはタクヤと梶谷の微笑む姿があったのでした

 

それが警察から逃げてきたのではなく

ちゃんと罪を償ってから現れた姿だと信じたい(笑)



【解説】映画.COMより

第2回大藪春彦新人賞を受賞した西尾潤の同名小説を、北村匠海主演、綾野剛と林裕太の共演で映画化。愛を知らずに育った3人の若者たちが闇ビジネスから抜け出そうとする3日間の出来事を、3人それぞれの視点を交差させながら描き出す。
タクヤとマモルはSNSで女性を装い、身寄りのない男たちから言葉巧みに個人情報を引き出して戸籍売買を行っている。劣悪な環境で育ち、気づけば闇バイトを行う組織の手先となっていた彼らだったが、時には馬鹿騒ぎもする普通の若者だった。タクヤは自分が闇ビジネスの世界に入るきっかけとなった兄貴的存在の梶谷の手を借り、マモルとともに裏社会から抜け出そうとするが……。
犯罪に手を染めながらも被害者を気にかける一面も持つ主人公・タクヤを北村、かつてタクヤに戸籍売買の仕事を教えた梶谷を綾野、兄のように慕うタクヤに誘われ、軽い気持ちで裏社会に足を踏み入れてしまったマモルを林がそれぞれ演じ、山下美月矢本悠馬木南晴夏が共演。Netflixドラマ「今際の国のアリス」シリーズなどのプロデューサー集団「THE SEVEN」による初の劇場作品で、「Little DJ 小さな恋の物語」の永田琴が監督を務め、「ある男」の向井康介が脚本を手がけた。

2025年製作/130分/PG12/日本
配給:THE SEVEN、ショウゲート