
原題は「大紅燈籠高高掛」(大きな紅い灯篭を高く吊るす)
原作は蘇童(スー・トン)の小説「妻妾成群 紅夢 」(妻と妾の群れ 紅夢)
父親を亡くし生活に困窮したため大学を中退した19歳のヒロインが
継母によって富豪の4番目の夫人として嫁がされます
その陳家の幸福の象徴(主人に愛される、跡継ぎを授かる)が紅い燈籠
紅い燈籠が上げられた夜だけ妻は特別な待遇を受けることができるのです

でもタイトルの「紅夢」とは、主人の夫人になるという
召し使いの少女の見た夢のことのように私は思いました
ヨーロッパを中心に映画は大ヒットし
第48回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞
しかし中国では(「菊豆」に続き)上映禁止となったそうです

1920年代の中国
継母によって富豪の陳佐千(チェン・ズォチェン)の第四夫人として
陳家に嫁がされた19歳の頌蓮(スンリェン)(コン・リー)
陳家でスンリェンを出迎えたのは召使いの雁兒(エンアル)でした
エンアルは奴隷にもかかわらずチェン氏の寵愛を受けていて
チェン氏の妻になれると信じていたため、スンリェンに敵意むき出し

その日、スンリェンの部屋の前に紅い燈籠が飾られると
彼女は召使いから王族のように扱われ、フットマッサージをされると
チェン氏の訪問を受けます
チェン氏はスンリェンが大学に進学したことで
頭の良い子が産まれることに期待していると言います
しかし初夜にもかかわらず第3夫人が体調不良だとチェン氏が呼び出され
チェン氏はスンリェンを置き去りにして、第三夫人の寝床に向かってしまいます

翌日、チェン家の慣例にしたがって
第一夫人の大太太(ユル)、第二夫人の卓雲(ヅォユン)
第三夫人 の梅珊(メイサン)に挨拶し
一緒に食事することになるスンリェン

第一夫人のユルに挨拶に行ったスンリェンは
ユルが100歳の老婆に見えて驚きます
だけどユルは長男の飛浦(フェイプー)を立派に育て上げ
第一夫人としての地位を揺るぎないものにしていました
(紅い燈籠が飾られることはなくなったが、緑の燈籠が常に灯っている)

第二夫人のヅォユンはとてもフレンドリー
第三夫人のメイサンには困ったものでしょ、と笑い
何かあったらいつでも相談してと励まします
ヅォユンは女の子しか産めなかったものの
チェン氏の望むことを深く理解していて、献身的
やはり第二夫人としての地位を揺るぎないものにしていました

第三夫人のメイサンは元舞台女優、美人で自由奔放でわがまま
チェン氏を翻弄しながらも、男からの愛され方を知っています
さらに男の子を産んでいるため、第三夫人としての地位は確実
でも嫁いできたばかりのスンリェン(と召使いのエンアル)は
そんな一夫多妻制(実際は一夫一妻多妾制)のしきたりより
自分のほうが若くて可愛い
ナンバーワンになれると勘違いしてるんですね

最初の食事の席から自分はベジタリアンなので肉料理は食べない
食卓を共にせず食事を自分の部屋に運ばせるなど
先輩の夫人たちに敬意を払いません

さらに横笛を吹いているフェイプーと会ったことで
(当時の中国で横笛は男のたしなみだったらしい)
スンリェンは父親の形見の横笛を探すとなくなっていることに気付き
エンアルが盗んだと思い込み彼女の部屋に押し入ります
笛は見つかりませんでしたが
部屋には(古くて修理された)紅い燈籠が掲げられ
スンリェンの名前が書かれた呪いの人形が隠されていました
怒り狂うスンリェンでしたが、エンアルに字は書けない
エンアルに紅い燈籠のことは誰にも言わないと約束し
名前を書いたのが第二夫人のヅォユンであることを聞き出します
優しく親切だと信じていたヅォユンは裏切り者だった
さらにチェン氏はいつも不機嫌なスンリェンに愛想を尽かし
ご無沙汰だったヅォユンの部屋の前に紅い燈籠を灯します

チェン氏の泊まりがなくなると
使用人たちからも軽く扱われるようになるスンリェン
腹を立てたスンリェンは体調が悪い(つわりの)ふりをして
月のものが来ていないと嘘をつきます
医師から「妊娠」だと告げられ吉報に歓ぶチェン氏
その日からスンリェンは特別扱いされ、チェン氏も毎夜訪るようになり
さらにチェン氏がヅォユンにスンリェンをマッサージするよう頼むなど
天狗になってしまうスンリェン
しかしエンアルに血の付いた下着を発見され
それをエンアルがヅォユンに密告したことで一転
ヅォユンの(妊娠を心配するふりをする)策略で
スンリェンはチェン家の主治医、高医生(ガオ医師)の診察を受けることになり
妊娠していないことがわかります
(スンリェンは旦那さえ通えばすぐに妊娠してごまかせると思っていた)

激怒したチェン氏はスンリェンの部屋の紅い燈籠全てに
黒い布を被せてしまいます
チェン氏に密告したのがエンアルだと思ったスンリェンは
罰としてエンアルの部屋から紅い燈籠を投げ出し
謝罪するまで雪の中でひざまずかせます
エンアルは謝罪を拒否し、一晩中ひざまずいていたため倒れてしまい
病院に運ばれます
それからチェン氏はヅォユンの部屋に通うようになり
チェン氏に短い髪のほうが似合うと勧められたとのろけ
スンリェンに髪を切ってほしいと頼みに来ます
頭にきてヅォユンの耳まで切ってしまうスンリェン
ヅォユンはスンリェンを許しますが

それを聞いたメイシャンは、私なら耳を切り落としていたわと
息子の妊娠中に(同時期に妊娠していた)ヅォユンから
毒を盛られていたことを打ち明けます
あなたもヅォユンから身を守り、チェン氏の夫人の座を維持したいなら
息子を産むしかない
さもなくば首を吊るかないわよと警告されます
それでもメイシャンが自我と幸福感を保てていたのは
女優時代から自分に思いを寄せていてくれるガオ医師の存在があること
その夜もガオ医師に会いに行くことを教えてくれます

その日はスンリェンの20歳の誕生日もありました
ひとり誕生日を祝うため、使用人にお酒と夕食を頼むと
使用人からエンアルが病院で死んだと聞かされます
しかもスンリェンの名前を言いながら死んだと
ただ生意気で身の程知らずなエンアルを懲らしめたかっただけ
まさか死んでしまうとは
スンリェンはやけ酒を飲み
気がつくとメイシャンがチェン家の警備員?たちに引きずられ
(かってチェン氏の行方不明になったふたりの妻が殺されたと噂される)
屋上にある「死の部屋」と呼ばれる離れに閉じ込められるのを見ます

スンリェンが「死の部屋」を覗きにいくと
メイシャンは処刑されたあとでした
パニックでヒステリーになるスンリェン
とホテルのベットを共にしているところを見つかり
姦淫罪として捕らえられことを知るスンリェン
スンリェンは何も覚えていませんでしたが
メイシャンとガオ医師との密会をヅォユンに教えたのは
酩酊状態のスンリェン自信だったのです

その後、死んだはずのメイシャンの部屋に紅い燈籠が灯ったり
彼女の歌声のレコードが流れたり
使用人たちはメイシャンの幽霊が出ると恐れるようになります
(スンリェンの仕業と思われる)
翌年の夏、チェン氏は新たに若い夫人をむかえます
第五夫人が恒例のフットマッサージを受けながら
中庭にいる(古い女学生の服を着た)女性は誰なのかと尋ねると
使用人は「彼女は第四夫人で気が狂った」とだけ答えたのでした

スンリェンとメイシャンはこうなったのはある意味自業自得で
それも全てスンリェンがやらかしたことなのですが
封建制度(古代中国の統治制度に由来する概念)の名残である男尊女子社会では
(権力者や富豪の)男に女が媚び売ってなんぼ
領土(国)を統じる男に気に入られた女の勝ち
常に笑顔で領主の全てを肯定し
領主に背を向ける者を排除することで信頼を得る
たとえ国や宗教が違っても、時代が
スンリェンやヅォユンや江青のような女はどこにでもいる
職場にも、近所にも、ママ友にも
初の女性内閣総理大臣にも
怖い、怖い、としか言えません(笑)
【解説】映画.COMより
1920年代の中国。父親が亡くなったことで家が没落した頌蓮(スンリェン)は、貧しい生活を愚痴る義母から逃げるため、地元の富豪の第4夫人として嫁ぐことに。第1夫人から第3夫人までそれぞれに住居が与えられ、第4夫人となった頌蓮の住まいにも、主人の寵愛を受ける印である赤い提灯が飾り付けられていた。初夜の夜、第3夫人に邪魔をされた頌蓮だったが、あらためて3人の夫人たちに会うと、彼女たちは主人の寵愛を受けるために生きているかのように見えた。そんな愛憎が渦巻く夫人たちとの関わりのなかで、ある事件が起こる。製作総指揮に「悲情城市」のホウ・シャオシェン。音楽を「マルサの女」や「悲情城市」なども手がけた立川直樹が担当。第48回ベネチア国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞。第64回アカデミー外国語映画賞ノミネート。2024年12月、「張芸諜 チャン・イーモウ 艶やかなる紅の世界」と題した特集上映にて、HDレストア版でリバイバル公開。
1991年製作/125分/中国・香港合作
原題または英題:大紅燈籠高高掛 Raise the Red Lantern
配給:AMGエンタテインメント